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教養・歴史 神の「家系図」で読み解く世界三大一神教

①ユダヤ人はキリスト教もイスラム教も認めない 福富満久

嘆きの壁(筆者撮影)
嘆きの壁(筆者撮影)

 2023年10月、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模襲撃で始まった紛争は年が明けても先行きを見通せないばかりか、周辺地域を巻き込み欧米主要国では、親・反イスラエルで国家を二分する議論に発展している。数千年単位で繰り返される攻防を理解するには、ユダヤ教とキリスト教、イスラム教というこの地を聖地とする世界三大一神教を学ぶ必要がある。

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 神は天と地を創られた。地はむなしく何もなかった。やみは深淵(しんえん)の中にあり、神の霊は水の上をおおい動いていた。神が「光あれ」と言われると、光があった。神は光とやみを分けて光を「昼」と名づけ、やみを「夜」と名づけられた。そして夕となり朝となって、一日が過ぎた……。

 聖書の礎である「創世記」の冒頭はこの一文から始まる。この世には神の存在を信じる人もいれば、信じない人もいる。宇宙の成り立ちは神によるものではなく、物理学や科学によって説明できるとする人もいる。それでもサルを飼い続けても人間にはならないように、何か特別なものが作用している、とうっすらと考えている人もいるだろう。

 宗教とは物語である。ユダヤ人の実際の家族史とその家族が3000年もの昔に天地創造の主=神によって創られたとする想像の物語が融合したのが「(旧約)聖書」であり、神によって選ばれた者(ユダヤ人)だけが救われる(楽園が用意されている)とするのがユダヤ教である。

 一方、救世主キリストの降誕(こうたん)によって、全ての者が差別なく救われると説いたのが「新約聖書」の世界=キリスト教である。イスラム教はイスラムが「帰依する者」という意味の通り、同じく唯一絶対の存在(アラー)を信じ、その預言者・神の言葉「コーラン」を預かった者であるムハンマドをアブラハム、モーゼ、イエスなど一連の預言者の系列の最後にして最大の預言者と位置づける。

 だが、ユダヤ人が聖書と呼ぶのは、それは私たちが「旧約聖書」と呼んでいるものであり、彼らは新約聖書の世界、つまりキリスト教を認めていない。ましてやイスラム教の「コーラン」もムハンマドも認めていない。

 一方、キリスト教もイスラム教も、旧約聖書の世界がなければ、彼らの考える宗教世界が完成しないため、ユダヤ教を認めている。どの宗教も救世主、つまり神がいて楽園が用意されている。生の不思議さと…

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