70年も25年も万博の理念は「世界共通の課題を議論する場」 木下功
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開幕まで残すところ約1年2カ月に迫った2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)。「成長を持続させる起爆剤」として期待される一方で、膨らみ続けるコストやずさんなスケジュール管理が批判され、交通計画、防災対策など課題も山積している。連載企画で「万博の現在地」を検証する。
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第1回のテーマは「万博の意義」。1970年の大阪万博、2005年の愛知万博を振り返りながら、25年の大阪で万博を開催する意義は本当にあるのか、あるとすれば何なのかを問う。
国際博覧会条約に基づいて、フランス・パリに本部を置く博覧会国際事務局(BIE)が公式に認める万博は2種類ある。大規模で総合的なテーマを扱う「登録博」と、比較的小規模で特定のテーマを掲げる「認定博」だ。これまでに日本で開催された登録博は70年の大阪万博と05年の愛知万博の二つで、現在準備が進められている25年の大阪・関西万博で3度目の開催となる。
70年万博の「小松左京」
70年大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だ。開催期間は70年3月15日から9月13日までの183日間で、大阪府吹田市の千里丘陵に総面積330ヘクタールの会場を造成。海外からは76カ国、4国際機関などが参加した。入場者数は当初想定を大きく上回る6421万人。1日平均約35万人が入場した計算になり、10年の上海国際博覧会に破られるまで万博入場者数の最多記録となった。
「人類の進歩と調和」というテーマは、どのように生まれたのか。
65年9月、大阪国際博覧会準備委員会(のちの万博協会)がテーマを検討・起草するテーマ委員会を設立しているが、この1年前に発足していた民間の「万博を考える会」が大きな役割を果たした。テーマ委員会の副委員長を務めた京都大学人文科学研究所の桑原武夫所長が万博を考える会のメンバーであり、同じくメンバーの民族学者の梅棹忠夫氏、社会学者の加藤秀俊氏、作家の小松左京氏らとともに、基本理念と「人類の進歩と調和」というテーマをとりまとめた。
小松氏が経緯を記した『やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記』によると、小松氏らは万博のアイデアが「通産省(現経済産業省)の輸出振興課から起こり国会での説明が、一種の輸出振興策として提案された」ことに違和感を持っていた。
小松氏らは64年当時に「万国博が、産業、技術の情報交換の場であった時…
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週刊エコノミスト
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