増大する万博経費は大阪府・市の目玉政策“教育・保育の無償化”に影を落とさないのか/2 木下功
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膨れ上がる会場建設費や運営費のために大阪府・市の財政は今後厳しい状況が予想される。さらに目玉政策である「教育・保育」の無償化、「塾代助成」の負担が経常的にのしかかる。連載2回目のテーマは府・市の負担金だ。
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大阪府と大阪市が2024年度当初予算案を発表した。来年4月に開幕を控えた25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場建設がピークを迎える年度であり、府・市は269億6500万円ずつ、合わせて539億円を負担する。府・市が共同で出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」の建築工事、地下鉄の輸送力増強、ボランティアの募集・研修など、万博関連経費全体では府・市合計で前年度比4倍の808億円を計上。府・市ともに支出が収入を上回り、自治体の貯金にあたる財政調整基金を取り崩して収支不足を補填(ほてん)する。
さらなるコスト上振れも
府の不足額は680億円で、市の不足額は225億円に上る。不足額は昨年2月の試算から府で160億円、市で54億円増加する。府の増加分のうち73億円は会場建設費の上振れが影響しており、市の収入不足は3年ぶり。府・市ともに財政調整基金には余裕があるものの、会場建設費の上振れが自治体財政を直撃する予算となった。
会場建設費の総額は最大で2350億円。17年の閣議了解に基づき、国、経済界、府・市で3分の1の783億円ずつ負担する。
会場建設費は、20年12月に600億円増加して1850億円となり、23年10月にさらに500億円増加して2350億円へと膨らんだ経緯がある。万博の運営主体である「2025年日本国際博覧会協会(万博協会)」は増加の主因について、1回目が会場のシンボルとなる大屋根の設計変更や暑さ対策、2回目が物価上昇による建設資材費と労務費の高騰と説明している。
2度にわたる会場建設費の大幅増加に加え、会場運営費も当初想定額の1.4倍の1160億円に膨張しており、万博協会の事業管理の甘さに批判が強まる。このため、国は有識者で組織する「予算執行監視委員会」を、万博協会は協会役員で構成する「運営費執行管理会議」を設置して厳格に管理していく方針だ。
だが、4月からは「働き方改革」の一環として建設作業員や物流ドライバーに対する時間外労働の上限規制がかかるとともに、国は両者の賃上げを促している。能登半島地震からの復興事業、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)による熊本県での第2工場建設なども控えており、人手も建設資材もより逼迫(ひっぱく)することは必至だ。万博協会は会場建設費の2度目の増額の際に、予備費として130億円を確保しているが、人件費、物件費の高騰による会場建設費や運営費のさらなる上振れの懸念は払拭(ふっしょく)できていない。
万博関連経費808億円のうち、大阪市が負担するのは457億円…
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週刊エコノミスト
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