米中覇権争いで「日韓半導体同盟」が前進 嚴在漢
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地政学リスクも背景に、半導体製造に強い韓国と、装置・部素材に強い日本が手を組む可能性が高まっている。
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米中半導体摩擦が過熱する中で、両国以外の地域や国々でも、半導体強化策は国の威信をかけた政策課題として浮上している。欧州連合(EU)は米国と歩調を合わせつつ、域内における半導体自給率アップを進めており、台湾は日米欧に大規模な工場建設を打ち出している。
そうした中、日本との関係改善に熱心な尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の就任(2022年5月)以降、日韓トップは23年11月までの約1年半の間に7回も首脳会談を行ってきた。主な話題は「中国デリスキング(リスク低減)」に対する日韓両国の共助であり、半導体分野の協力は重要テーマの一つである。筆者は両国の関係緊密化が、いずれは「日韓半導体同盟」へと発展する可能性を感じている。
再開した日韓経済交流
尹大統領は23年3月16~17日の両日間、野党による「屈辱的な対日外交だ」との激しい反対を振り切って韓国大統領としては4年ぶりに訪日し、岸田文雄首相や日本経団連などと会談を行った。また、サムスングループやSKグループなど20社余りの韓国財界ブレーンが尹大統領に随行し、日韓の最大懸案である経済交流の再開について大きな進展をみせた。
日本政府による半導体製造用素材の韓国への輸出管理厳格化の解除や、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の正常化、日本が韓国を「ホワイト国(優遇対象国)」に再指定するなどの、19年以降に悪化した日韓関係の正常化を進める方向で、両国首脳の意見は一致した。
韓国は、日本製の装置・材料の積極的な協力により、世界メモリー半導体市場におけるトップの座を30年以上堅持している。22年末における韓国の半導体装置・部材の輸入額2614億ドル(38.4兆円)のうち、日本からは394億ドル(約5.7兆円)と15%強を占めている。18年対比3ポイント程度低下したものの、この間に韓国産電子部品の日本の輸入割合は11.8%増と継続的に増加している。
19年に当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権は日本の半導体向け材料に対する輸出管理厳格化をうけて、コア装置・部材の国産化率アップを掲げたものの、短期間に実現することはできなかったのが実情だ。韓国政府はそれまで、日本政府による輸出規制に対して、感情的に国産化率アップをあおり立てた側面があったのは否めない。
しかし、これは半導体のエコシステムの健全な発展には、適切とはいえない手法だ。なぜなら、世界的な分業化による精緻なサプライチェーンが構築された半導体産業は、一国だけですべての工程を独占できない特徴を持つ。日韓関係が最もギクシャクしていた19~21年の3年間(安倍晋三・文在寅政権)に、両国間の輸出と投資減少額を推定した結果、総額20兆3310億ウ…
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週刊エコノミスト
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