王者インテルがAI機能を持つパソコン用プロセッサーで反撃へ 津田建二
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カリスマ技術者がCEOで返り咲いたことで、インテルの開発陣が勢いづいている。
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半導体の王者インテルが、AI機能を盛り込んだ新型プロセッサーを投入して、本格的な巻き返しに打って出ている。株式時価総額では、AIに必須のGPU(グラフィックス・プロセッサー=画像処理半導体)で独走するエヌビディアに水をあけられ(エヌビディア1.47兆ドル、インテル2030億ドル)、長年守ってきた半導体における世界売り上げ首位の座も、2023年はエヌビディアに追いつかれたようだ。
インテルは、23年暮れに新型プロセッサー「Core Ultra」を発売。これを機に同社は「AI Everywhere(どこでもAI)」戦略を打ち出した。これが戦略商品となるのは、誰でも使えるパソコン向けの半導体商品だからである。
AIは、何かを学習することによって、似たようなものを推論して判断する技術である。人間のような認知能力、推論、判断などの幅広い能力を持つ存在では決してない。したがって、さまざまな用途に使われるように常にカスタマイズする必要がある。AIは、顧客の要求を事細かくヒアリングするコンサルティングを伴うビジネスが多い。
この分野は、ゲーム用のGPUを開発してきたファブレス半導体メーカーであるエヌビディアがトップを走っていた。AIは自動運転や画像を認識・分類する技術としてさまざまな用途に使えることが明らかになり、インテルも数年前から開発を進めてきた。
生成AIをパソコンで
これまで学習可能なAIチップは、クラウドサーバーをはじめとする高性能なコンピューターにしか搭載されなかった。エヌビディアの最先端チップは数百万円もする超高級製品だ。これでは一般ユーザーは使えない。
今年1月9日、米国ネバダ州ラスベガスで開催された先端技術の見本市CESにおいて、インテルのパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)は基調講演で登場。AIをかつてのWi-Fiの勃興期になぞらえ、高速無線通信が20年後に当たり前になったように、AIも20年後には当たり前の時代がやってくると述べている。現在もパソコン用プロセッサーで圧倒的なシェアを持つインテルが、AIが普及期に入る今後においてこそ、同社の強みを発揮できると強調したわけである。
AI技術では、従来の何かを推論するだけではなく、テキストや画像などを作り出す生成AIも登場。どのような質問にも答えてくれるという、この巨大なソフトウエアからなる生成AIは、ハイエンドのクラウドサーバーを介して処理することを基本としていた。この市場にインテルは、生成AI技術をクラウドにつなげなくてもパソコンでできることを昨年12月の記者会見でお披露目した。希望の画像が欲しいとテキストで入力すると、希望の画像を5~10秒かかったが、出力したのである。
技術志向…
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週刊エコノミスト
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