資源・エネルギー エネルギー
相次ぐ米国シェール権益の大型M&A 東京ガスも昨年末に買収 岩間剛一
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エクソンモービルやシェブロンといった石油メジャーだけでなく、東京ガスも米シェール権益の大型買収に乗り出している。
“脱炭素”とはいえ石油・天然ガスも依然必要
米国のシェールガス・オイルにかかわる大型のM&A(企業の合併・買収)が相次いでいる。脱炭素、脱化石燃料への道筋が容易ではないうえ、ロシアのウクライナ侵攻など地政学的要因もあり、石油・天然ガスが今後も重要なエネルギー源であるとの認識が拡大しているためで、巨大油田に比べて開発が容易な米国のシェール権益に注目が集まっている。
世界最大の石油メジャー、米エクソンモービルは昨年10月、米シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズを595億ドル(約8兆6000億円)で買収すると発表した。テキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン鉱区を中心に、石油・天然ガス生産量合計日量60万バレルを手に入れ、エクソンモービルの石油・天然ガス生産量は日量450万バレルと、OPEC(石油輸出国機構)加盟国イラクに並ぶ生産量に拡大する。
また、石油メジャー2位の米シェブロンは、23年5月の米独立系PDCエナジーに続き、同10月には同じく米独立系ヘスの買収を発表した。ヘスはノースダコタ州のシェールオイル開発で知られ、南米ガイアナで海底油田も開発している。シェブロンは豪州のLNG(液化天然ガス)案件に加えて、米国内のシェール開発、中南米にも事業領域を拡大し、25年の石油・天然ガス生産量は日量400万バレルに増加する。
東京ガスも昨年12月、テキサス州とルイジアナ州でシェールガスを開発する米ロッククリフ・エナジーを27億ドルで買収すると発表した。日本企業による過去最大級のシェール権益獲得で、東京ガスの米国国内の天然ガス生産量はLNG換算で年間1000万トンとなり、日本のLNG輸入量の6分の1程度に相当する。24年に入っても、米シェール開発企業に絡むM&Aは続いている(表)。
短期間で投資回収可能
米国国内のシェールガス・オイル権益取得が活発化しているのは、いくつかの要因が挙げられる。
第一に、世界的な脱炭素の流れにあっても、現実には脱化石燃料への道筋が容易ではないことへの理解が広がってきた。燃焼時に二酸化炭素を排出しないアンモニアや水素へ代替する動きもあるものの、割高な生産コストや巨額なインフラ整備といった課題が多く、今後も石油と天然ガスが必要との現実論が支配的になっている。
2030年や50年のエネルギー構成を見据えると、IEA(国際エネルギー機関)、EIA(米国エネルギー情報局)、OPECなどの専門機関の予測では、ベ…
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週刊エコノミスト
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