投資・運用

米証券取引委がビットコインETF上場承認 暗号資産全般への冷淡さは変わらず 大崎貞和

ビットコインETF「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト」のナスダック市場上場を祝う運用会社ブラックロックなどの関係者(1月11日) Bloomberg
ビットコインETF「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト」のナスダック市場上場を祝う運用会社ブラックロックなどの関係者(1月11日) Bloomberg

 米証券取引委員会(SEC)がビットコインETFの上場を一転して承認した背景には一つの判決があった。

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 暗号資産(仮想通貨)の代表格ビットコイン(BTC)の現物を運用対象とする11本のETF(上場投資信託)が1月10日、米証券取引委員会(SEC)に承認された。承認翌日には早速取引が始まり、取引初日に7億ドル(約1000億円)を集めた。さらに開始6日間で約9万5000BTCが保有され、運用資産総額は40億ドル(約5900億円)に迫る勢いとなっている。

 取引は「取引所」とも呼ばれる暗号資産交換業者を介して活発に行われている。2017年12月には、米国の先物取引所でのビットコイン先物取引も始まった。こうした中で浮上したのが、ビットコイン現物を裏付け資産とするETFの構想だった。

 投資信託は多くの投資家から資金を集め、株式や債券から不動産や暗号資産に至るまでさまざまな資産への投資・運用を行う仕組みの金融商品だ。いつでも換金できるという一般的なオープンエンド型投信は、設定(買い付け)や解約(換金)する場合の価格は、純資産価値を基に1日1回確定する基準価額になる。

 対して、原則は運用会社に換金請求できず、証券取引所の市場で売買される投信がETFだ。上場することで換金性・流動性が確保される。市場での取引価格は純資産価値と一致するとは限らないが、毎日の基準価額でしか買い付けや換金ができないオープンエンド型投信とは異なり、日中の価格変動を反映した売買が可能だ。

 そこで、ビットコインを保有する信託が、信託の管理・運用などの成果を受ける権利「受益証券」を発行する形でETFを組成するアイデアが生まれた。米国では規制監督当局であるSECが上場を承認するが、SECは18年3月、証券取引所によるビットコインETFの上場申請を認めないという決定を下した。SECによる不承認の理由は、要約すれば「ビットコインの現物市場では詐欺や相場操縦のリスクが大きく、かつETF上場を目指す証券取引所が十分に取引量の大きい規制された市場との間で市場監視協定を結んでいない」というものだった。その後、23年までに複数の証券取引所が十数件にのぼるビットコインETFの上場申請をしたが、SECは一貫して上場を承認しなかった。

先物ETFの上場先行

 他方、ビットコインの先物ETFについては、21年10月の「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF」を皮切りに、23年8月までに計5本の上場がSECによって承認された。これは、ビットコイン先物市場が米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下にある先物取引所によって運営されており、先物ETFを上場する証券取引所との間で市場監視協定を結ぶことが可能だったからだ。

 ただし、先物ETFでは、裏付け資産とする先物の期限が満了する月(限月)が来…

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