利上げ局面でも金が買われて高値更新 買ったのは新興中銀と日中の個人投資家 池水雄一
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日本や中国の個人が自国通貨建て資産の目減りを懸念し、金利と無関係に金を買う動きが相場を押し上げている。
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金価格はこれまで米国の金利と逆相関するとされてきた(図1)。歴史的な推移を見るとそれはほぼ正しい。ただ、よく耳にする「金には金利がない」というのは、厳密には正しくない。ほかの通貨と同じように金にも先物市場があり、先物価格は金スポット価格と「リースレート」という金の金利で決まるからだ。
リースレートとは英ロンドンの銀行でプロ同士の取引でのみ適用可能な金利で、金のリース(貸借)に伴うコストに相当する。もっとも、リースレートはたいていの通貨の金利と比べると、ほぼ常に非常に低い。1カ月などの短期の場合、米ドルの5%に対して0.1%程度。このレベルでは、一般の投資家が手にすることはほぼない。そのため「金には金利がない」という認識になるのだろう。
米ドルを代表とする通貨の金利が上昇すれば、超低金利の金を資産として保有する魅力は乏しくなる。それゆえに、米国などの金利が上昇すると金が売られ、金利が下落すると相対的に金が買われることになる。しかし、今はそうなっていない。米連邦準備制度理事会(FRB)の度重なる利上げや長期金利の上昇にもかかわらず、金は昨年末、1トロイオンス=2000ドルを超え、歴史的高値を更新している。
欧米の個人や機関投資家は、今回の金利上昇局面で金を売っている。昨年、金ETF(上場投資信託)の裏付けとなる金の残高は欧州で180トン減、米国では82トン減だ。世界最大の先物取引所である米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では、金先物の投資家ポジション残高が一時、売り越しとなる場面があった。先物市場で投資家の売り越しは基本的にはまれで、それだけ急激な金利高に反応して売ったことを意味する。
上海プレミアムが高騰
米長期金利は昨年、16年ぶりに5%超へと上昇したが、前回に5%を超えた07年当時、金価格は700ドルだった。つまり、金利と金の関係は明らかに変わったのだ。欧米投資家の売りに対して、金を買っているのは第一に新興国の中央銀行…
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週刊エコノミスト
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