絶好調の米国経済に潜む“失速リスク”の芽 井出真吾
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日米で活況を呈する株式市場だが、好調な米国経済の急減速リスクを日本株は織り込んでいない可能性がある。
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現在、米景気は想定以上に強い。直近の主な経済指標で見ると、2023年12月の米個人消費支出(PCE)は、前月比0.7%増と事前予想の0.5%増を上回り、今年1月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が35.3万人増(事前予想18.5万人増)。さらに、今年1月のISMサービス業景況感指数は53.4(同52.0)と前月50.7から大きく上昇している。製造業の景況感も回復傾向にあり、足元の米景気は非の打ちどころがないほど好調だ。目下、米国が早期利下げに踏み切る必然性はどこにも見当たらない。
こうした状況を受け、米債券市場は一時3.8%台に低下した10年債利回りが4.3%程度まで上昇するなど、幅広い年限の金利が上昇。株式市場もニューヨークダウやS&P500株価指数が史上最高値を更新している。数カ月前まで米金利が上昇すると株価が下落するケースが多く、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期が市場想定より遅いとの観測が強まった時も株価が軟調に推移することが多かった。
ところが今回は金利上昇でも株価が上昇しており、米株式市場は金利動向よりも実体経済を重視する動きに変わったようだ。実際、マイクロソフトなどの米主要企業の決算は好調で、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)の最新の米国の実質国内総生産(GDP)成長率見通しは引き上げられている。米経済のソフトランディング(軟着陸)期待は一層高まっているようだ。
地銀の信用不安
だが、リスクの芽も出始めている。消費が堅調な一方で、クレジットカードの延滞率が急増しており、23年第4四半期には全ての年齢層で過去10年で最高の率となった。消費が旺盛な一方で、支払いが容易でなくなっており、BNPL(Buy Now Pay Later)という後払い方式の利用が増えている。BNPLはインターネットショ…
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週刊エコノミスト
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