経済・企業 中国
中国に迫るデフレ不況 ラムスレン・シャラブデムベレル
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住宅バブルの後遺症は長期化し、政府の景気対策の効果も芳しくない。少子高齢化という構造問題も抱え、厳しい経済情勢が続く。
人民元安回避の苦肉の金融緩和
中国経済は当局の景気支援姿勢強化にもかかわらず、低迷を続けている。国家統計局の1月製造業PMIは49.2と改善・悪化の分岐点である50を4カ月連続で下回った。内訳では「新規受注」「輸出向け新規受注」など主要項目が50以下にとどまったほか、「雇用」項目が47.6と1年ぶりの低水準に悪化しており、現行の政府の支援策が中国経済を回復させるには、やや不十分であることを示唆している。
個人消費の弱さ
住宅市場も多くの支援策が講じられているものの、改善の見通しが立たない。昨年7月の共産党指導部会議の声明文では、2016年以降強調されてきた「住宅は住むためのものであり、投機の対象ではない」という文言が削除されたほか、8月には2件目の住宅購入でも、1件目と同様に有利な条件が適用されるよう住宅購入規制が緩和された。しかし、住宅販売は2桁台の減少を続けており、不動産不況は長期化の様相を強めている。
中国家計資産の6割程度を住宅が占めているため、住宅価格の下落は消費者センチメント(心理)の悪化を通じて個人消費に負の資産効果をもたらしている。中国の個人消費をみるうえでは、小売売上高統計が最もよく使われるが、23年の小売売上高は前年のベースが低かったこともあり、消費の減速を十分に表せていない。コロナ発生後4年間の中国経済は規制や政策の影響で強弱振れの大きい展開となっていたため、コロナ後の経済指標を見るには2年平均でみることが有用である。
小売売上高の伸び率を2年平均でみると、コロナ前の8%程度から23年には3%未満に減速したことがわかる(図1)。消費者センチメントも22年のゼロコロナ政策を受けて、改善・悪化の分岐点である100を大きく割り込んだ後、23年のゼロコロナ政策の解除にもかかわらず、100を回復することなく、低水準にとどまっており、前述の小売売上高の減速と同様に個人消費の弱さを示唆している。
今後の成長率を予想するうえでは、3月5日開催の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で公表予定の成長率を含めた24年政府目標が重要だ。23年GDP(国内総生産)成長率は5.2%と政府目標の5%を達成しており、24年も野心的な5%程度の高い目標を維持する可能性もある。
しかし、上海市を含む中国の省級行政区の多くが23年目標未達だったこともあり、24年目標を控えめに設定している。1月末時点で発表されている省・自治区の成長率目標の加重平均は23年を0.…
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週刊エコノミスト
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