米国で強まる気候変動懸念 “もしトラ”でも流れ変わらず 亀山康子
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パリ協定を否定するトランプ氏が返り咲いても、米国の温暖化対策は進展するだろう。
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2016年の大統領選で、トランプ氏は「気候変動はうそ」と主張し、17年に大統領に就任すると、地球温暖化/気候変動(以下、「気候変動」)対策に関する国際的な「パリ協定」からの離脱を宣言した。もし再選したら、同様に気候変動対策に消極的な姿勢を示す可能性が高い。ただ、トランプ氏の意向に関係なく、気候変動対策への世界の潮流は変えられない。
民主党政権時には進展し、共和党政権時には後退する──。環境政策を巡って、米国の民主、共和両党の姿勢は長年、振り子のように揺れ動いてきた。例えば、クリントン政権下だった1997年、先進国に初めて温室効果ガス排出削減を義務づけた「京都議定書」が合意されたが、次のブッシュ政権は参加しなかった。 09年就任のオバマ大統領は、再生可能エネルギー支援策や自動車燃費改善などの政策を次々と打ち出し、気候変動政策を推進した。一方、パリ協定の離脱を決定したトランプ政権下では気候変動に関する研究や政策導入に対する政府予算は大幅に削られた。
増える「気候訴訟」
ただ、トランプ大統領の方針にかかわらず、この時期の米国の温室効果ガス排出量は減少傾向にあった。オバマ政権時代に導入された支援策や、一部の州の積極的な取り組みで風力発電が急速に増加し、一部地域で石炭火力発電よりも安く電力を調達できるようになったためだ。これを後押ししたのが、さまざまなレベルでの自発的行動だ。
トランプ大統領によるパリ協定からの離脱表明の直後、州知事や市長、企業などは大統領を非難し、国とは一線を画して排出量対策に力を入れた。近年の米国では、政権を取っている政党次第で国全体が振れるというよりは、かたくなに気候変動に反対する勢力と、対策の緊急性を主張する勢力との分断状態になっている。
一方、23年に米国で実施された複数の世論調査からは、トランプ政権時とは明らかに異なる状況が表れている。民主党支持者の大半が気候変動を懸念している傾向は変わらないが、共和党支持者の中でもこうした人の割合が増えてい…
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週刊エコノミスト
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