米大統領選の“老老対決”枠を打ち破る「第3の候補」は誰だ 西山隆行
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バイデン、トランプ両氏による「同じ顔ぶれの老老対決」の可能性が高まる中、第三極からの出馬を目指す動きも出てきた。
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バイデン、トランプ両氏とも高齢で支持率が低く、新たな重要争点もないため、政策論争を置き去りにした「悪口合戦」が11月まで続きそうだ。決定打に欠ける中、勝敗を決めるのは両氏ではない「第3の候補」になると筆者はみている。一方、2大政党の膠着(こうちゃく)に伴って、政治・社会の「分断」が一層加速する可能性がある。
大統領選挙は、50州と首都ワシントンDCに割り振られた計538人の選挙人の獲得数で勝敗が決まる。このうち48州は、相手より1票でも多く獲得すれば、全ての選挙人を得られる「勝者総取り方式」が導入されている。大半は民主党、共和党に色分けされるが、アリゾナ、ウィスコンシン、ジョージア、ネバダ、ペンシルベニア、ミシガン──の6州は両党の勢力が伯仲しており、選挙のたびに勝利する政党が入れ替わる。
6州で実施された大統領選の世論調査によると、ウィスコンシン州を除く5州でトランプ氏がバイデン氏をリードした。一方、政党支持率では4州で民主党がリードしている。候補者の支持と政党の支持との間でズレが生じており、結果を見通すのは困難だ。両氏の支持率が競っている場合は、第3の候補が選挙戦全体を左右する可能性がある。
といっても、第3の候補が両氏をしのぐ勢力になるという意味ではない。米大統領選の歴史の中で、有力候補を押しのけて勝利した第3の候補は、共和党のリンカーン(1860年当選)だけだ。しかし、第3の候補がバイデン、トランプ両氏の足を引っ張って、どちらかを落選させる可能性は高い。評価は分かれるものの、最近ではロス・ペロー氏(1992年)、ラルフ・ネーダー氏(2000年)、ジル・スタイン氏(16年)らのケースがある。
票を奪う「壊し屋」
今回、第3の候補として誰が目されているのか。日本で最も知名度があるのは、ロバート・ケネディ・ジュニア氏だろう。暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官の息子で、ケネディ元大統領(民主党)のおいにも当たる政界名門一族の出身だ。環境問題を専門とする弁護士だが、近年では反ワクチンやコロナ関係の陰謀論で注目を集めた。ウクライナ危機の発生はバイデン氏に責任があると訴えるなど、主張は民主党よりも共和党に近いとされる。しかも、ケネディ氏が唱える陰謀論はトランプ氏の言説に近い。このため、当初は民主党からの出馬を目指していたが、無所属からの出馬を宣言した。不人気な「老老対決」が想定される中、民主党だけでなく、共和党からも票を奪う「壊し屋(スポイラー)」として注目される。
ワイオミング州選出の下院議員を務めたリズ・チェイニー氏も、共和党から票を奪う可能性がある。ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘…
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週刊エコノミスト
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