新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 トランプ再び

米大統領選の“老老対決”枠を打ち破る「第3の候補」は誰だ 西山隆行

「バイデンはクビだ」と書かれたプラカードを掲げるトランプ支持者(米ミシガン州で2024年2月17日、Bloomberg)
「バイデンはクビだ」と書かれたプラカードを掲げるトランプ支持者(米ミシガン州で2024年2月17日、Bloomberg)

 バイデン、トランプ両氏による「同じ顔ぶれの老老対決」の可能性が高まる中、第三極からの出馬を目指す動きも出てきた。

>>特集「トランプ再び」はこちら

 バイデン、トランプ両氏とも高齢で支持率が低く、新たな重要争点もないため、政策論争を置き去りにした「悪口合戦」が11月まで続きそうだ。決定打に欠ける中、勝敗を決めるのは両氏ではない「第3の候補」になると筆者はみている。一方、2大政党の膠着(こうちゃく)に伴って、政治・社会の「分断」が一層加速する可能性がある。

 大統領選挙は、50州と首都ワシントンDCに割り振られた計538人の選挙人の獲得数で勝敗が決まる。このうち48州は、相手より1票でも多く獲得すれば、全ての選挙人を得られる「勝者総取り方式」が導入されている。大半は民主党、共和党に色分けされるが、アリゾナ、ウィスコンシン、ジョージア、ネバダ、ペンシルベニア、ミシガン──の6州は両党の勢力が伯仲しており、選挙のたびに勝利する政党が入れ替わる。

 6州で実施された大統領選の世論調査によると、ウィスコンシン州を除く5州でトランプ氏がバイデン氏をリードした。一方、政党支持率では4州で民主党がリードしている。候補者の支持と政党の支持との間でズレが生じており、結果を見通すのは困難だ。両氏の支持率が競っている場合は、第3の候補が選挙戦全体を左右する可能性がある。

 といっても、第3の候補が両氏をしのぐ勢力になるという意味ではない。米大統領選の歴史の中で、有力候補を押しのけて勝利した第3の候補は、共和党のリンカーン(1860年当選)だけだ。しかし、第3の候補がバイデン、トランプ両氏の足を引っ張って、どちらかを落選させる可能性は高い。評価は分かれるものの、最近ではロス・ペロー氏(1992年)、ラルフ・ネーダー氏(2000年)、ジル・スタイン氏(16年)らのケースがある。

票を奪う「壊し屋」

 今回、第3の候補として誰が目されているのか。日本で最も知名度があるのは、ロバート・ケネディ・ジュニア氏だろう。暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官の息子で、ケネディ元大統領(民主党)のおいにも当たる政界名門一族の出身だ。環境問題を専門とする弁護士だが、近年では反ワクチンやコロナ関係の陰謀論で注目を集めた。ウクライナ危機の発生はバイデン氏に責任があると訴えるなど、主張は民主党よりも共和党に近いとされる。しかも、ケネディ氏が唱える陰謀論はトランプ氏の言説に近い。このため、当初は民主党からの出馬を目指していたが、無所属からの出馬を宣言した。不人気な「老老対決」が想定される中、民主党だけでなく、共和党からも票を奪う「壊し屋(スポイラー)」として注目される。

 ワイオミング州選出の下院議員を務めたリズ・チェイニー氏も、共和党から票を奪う可能性がある。ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘…

残り1817文字(全文3017文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事