「米国の分断」を可視化する大統領選が“決戦の火曜日” 編集部
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前回と同じ構図となる公算が大きい米大統領選は、民主主義の劣化といった問題も突きつけそうだ。
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米大統領選は3月5日、予備選・党員集会が集中する「スーパーチューズデー」(決戦の火曜日)を迎え、民主、共和両党の候補者選びが本番を迎えている。
「バイデンは米国を破壊している。ジョー、お前はクビだ、出て行け」。2月25日に米サウスカロライナ州で実施された大統領選の共和党予備選で、ニッキー・ヘイリー氏(52)を大差で破ったトランプ前大統領(77)が、民主党のバイデン大統領(81)への敵意をむき出しにすると、大きな拍手が起こった。
トランプ氏にとっては、サウスカロライナ州で予備選5連勝となり、指名獲得に向けて大きな前進となった。苦戦が続くヘイリー氏が出馬を断念し、トランプ氏に一本化されるかが焦点になる。
民主党の候補者選びでは、ディーン・フィリップス氏(55)が「世代交代」を訴えているが、バイデン氏が有力視されている。ただバイデン氏の支持率は低く、バイデン氏が「高齢者批判」をはね返し、若者世代の支持をつなぎとめることができるかが課題になる。
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選挙戦では内政のインフレ対策のほか、外政ではロシアとの戦争が3年目を迎えたウクライナへの支援や、イスラエルとイスラム組織ハマスとの武力衝突への対応などが最大の争点だが、米国の「分断」への懸念とともに、「民主主義のあり方」についても課題を残す。
国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務める米調査会社ユーラシア・グループは1月、2024年の世界「10大リスク」の報告書をまとめ、「米国の分断」を1位に選んだ。2位は中東問題、3位はウクライナ問題だった。
報告書は「米国の軍事力と経済力は極めて強力なままだが、米国の政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどい。今年はさらに悪化する」と指摘。「民主党、共和党とも負けた側はその結果を不当なものと考え、受け入れようとしない。世界で最も強力な国が、自由で公正な選挙、平和的な権力移譲、三権分立による制度的チェック・アンド・バランスなど、基盤となる政治制度に対する重大な課題に直面している」としている。
報告書は「属人的、権威主義的で、気まぐれなトランプ氏の復活は、米国の民主主義に深刻な打撃を与えるだろう」とも指摘するが、米国内での「民主主義」の見方については意見が分かれそうだ。
双方が「民主主義の敵」
AP通信とシカゴ大世論調査センターが昨年11、12月に米国成人約1100人を対象にした世論調査では、62%が大統領選の勝者次第で米国の民主主義が危機に陥…
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