国際・政治

「米国の分断」を可視化する大統領選が“決戦の火曜日” 編集部

予備選の集会で候補者を迎える有権者(米サウスカロライナ州ロックヒルで2024年2月)(Bloomberg)
予備選の集会で候補者を迎える有権者(米サウスカロライナ州ロックヒルで2024年2月)(Bloomberg)

 前回と同じ構図となる公算が大きい米大統領選は、民主主義の劣化といった問題も突きつけそうだ。

>>特集「トランプ再び」はこちら

 米大統領選は3月5日、予備選・党員集会が集中する「スーパーチューズデー」(決戦の火曜日)を迎え、民主、共和両党の候補者選びが本番を迎えている。

「バイデンは米国を破壊している。ジョー、お前はクビだ、出て行け」。2月25日に米サウスカロライナ州で実施された大統領選の共和党予備選で、ニッキー・ヘイリー氏(52)を大差で破ったトランプ前大統領(77)が、民主党のバイデン大統領(81)への敵意をむき出しにすると、大きな拍手が起こった。

 トランプ氏にとっては、サウスカロライナ州で予備選5連勝となり、指名獲得に向けて大きな前進となった。苦戦が続くヘイリー氏が出馬を断念し、トランプ氏に一本化されるかが焦点になる。

 民主党の候補者選びでは、ディーン・フィリップス氏(55)が「世代交代」を訴えているが、バイデン氏が有力視されている。ただバイデン氏の支持率は低く、バイデン氏が「高齢者批判」をはね返し、若者世代の支持をつなぎとめることができるかが課題になる。

拡大はこちら

 選挙戦では内政のインフレ対策のほか、外政ではロシアとの戦争が3年目を迎えたウクライナへの支援や、イスラエルとイスラム組織ハマスとの武力衝突への対応などが最大の争点だが、米国の「分断」への懸念とともに、「民主主義のあり方」についても課題を残す。

 国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務める米調査会社ユーラシア・グループは1月、2024年の世界「10大リスク」の報告書をまとめ、「米国の分断」を1位に選んだ。2位は中東問題、3位はウクライナ問題だった。

 報告書は「米国の軍事力と経済力は極めて強力なままだが、米国の政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどい。今年はさらに悪化する」と指摘。「民主党、共和党とも負けた側はその結果を不当なものと考え、受け入れようとしない。世界で最も強力な国が、自由で公正な選挙、平和的な権力移譲、三権分立による制度的チェック・アンド・バランスなど、基盤となる政治制度に対する重大な課題に直面している」としている。

 報告書は「属人的、権威主義的で、気まぐれなトランプ氏の復活は、米国の民主主義に深刻な打撃を与えるだろう」とも指摘するが、米国内での「民主主義」の見方については意見が分かれそうだ。

双方が「民主主義の敵」

 AP通信とシカゴ大世論調査センターが昨年11、12月に米国成人約1100人を対象にした世論調査では、62%が大統領選の勝者次第で米国の民主主義が危機に陥…

残り1164文字(全文2264文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事