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三菱重工、富士通も続々実施の「株式分割」は“値がさ株”に注目 山本泰三

 2023年から急増している株式分割。今年から始まった新NISAにより、拍車がかかっている。

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 株式分割をする企業が2023年から急増し、24年に入っても増加傾向をたどっている。22年に株式分割を実施した企業は97社だったが、23年は154社となり、24年は2月16日時点ですでに46社を記録した。

 23年には、3月にユニクロを展開するファーストリテイリングが1対3の株式分割を実施したことが市場関係者の話題を集めたほか、NTTが1株を25株に分割し、最低投資金額が1万円台となったことも記憶に新しい。その後も、半導体関連の東京エレクトロンやアドバンテスト、自動車部品大手のデンソーのほか、ローム、JR東海などが株式分割を実施した。日清食品ホールディングス(HD)は、1963年の上場後初めて株式を1対3に分割した。

 24年もこうした流れを引き継いで、セブン&アイ・HDが1対3に、三菱重工業や富士通も1対10にするなどの株式分割を予定する。スズキや日本触媒、タムロンなどの企業も株式分割実施を予定している(表1)。

新NISAで拍車

 それでは、なぜ、株主分割が足元で急増しているのか。その要因としては、大きく三つの理由が挙げられる。

 1点目は、東証が従来、「望ましい投資単位の水準」として「5万円以上50万円未満」と明示してきたことである。この水準を超えた場合は、企業に投資単位の引き下げに関する考え方や方針を開示するように義務付けており、個人投資家が投資しやすい環境整備を求めてきた。こうした東証の要請について、実効性は乏しかったという指摘もあるものの、大枠が設けられていたことが、このところ株式分割が相次ぐ前提になっていたといえる。

 2点目としては、24年1月から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートして、企業が個人投資家に株式を買ってもらいやすくするために株式分割を実施しているということが挙げられる。23年に株式分割を実施した信越化学工業は、「新NISA制度が発足することも踏まえ、株式の分割によって個人投資家の皆様に投資してもらいやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的としている」と目的を明記している。

 これについては、政府が「資産所得倍増プラン」を推進し、23年を「資産所得倍増元年」と位置づけ、貯蓄から投資への流れを推進してきたことが、株式分割につながってきたともいえる。新NISAは始まったばかりだが、政府が長期投資を継続できる環境を整えている今、企業が自社に投資してもらおうとする動きは今後も続く可能性が高いだろう。

 3点目は企業が安定株主として個人株主を欲していることが挙げられる。従来、日本の大企業の間では、安定株主として株式の持ち合いが多く見られてきたが、近年は本業との関係性が低い他社の株式を保有し続けることが問題視されるようになり…

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