国際・政治ワシントンDC

米国でも浸透する中国ECサイト 関税免除規定の利用に議論沸騰 清水梨江子

ニューヨーク市にSHEINが開設した期間限定店(Bloomberg)
ニューヨーク市にSHEINが開設した期間限定店(Bloomberg)

 スポーツ界最大の祭典ともいわれる「スーパーボウル」の夜、米国の人々はテレビの前にくぎ付けになる。平均視聴者数は1億2000万人といわれており、テレビCMの放映料は、30秒間で700万ドル(約10億円)もの高額になる。そして今年のスーパーボウルでは、Temu(ティームー)という中国企業が6回もCMを放映した。

Temu、SHEIN

 ティームーは2022年9月に設立された中国発の電子商取引(EC)サイトであり、アパレル、日用品から電化製品まで激安の商品ラインアップを有している。例えば、スマートフォンなどに接続するワイヤレスイヤホンは4ドル(約600円)以下で購入でき、米国内に送料無料で発送してくれる。

 最近ワシントンDCでは、同じく中国発でアパレル系の商品を中心とするSHEIN(シーイン)という激安ECサイトの名前を頻繁に耳にするようになった。両社は、中国から直接米国の消費者に商品を発送するサービスを展開している。ユーザーは既に米国で1億人を突破しているが、一定額以下の個人宛て小包には関税が免除されるという米国のデミニマス規定を利用してビジネスを伸ばしていることで特に注目されている。

 デミニマス規定はもともと、輸入品から関税を徴収する米政府職員の負担を軽減するために設けられた規定である。価値の低い輸入品からわずかの関税を徴収する作業は労力に見合わないという理由から、一定額以下は関税を免除することにしたものである。

 デミニマス規定の限度額は時代とともに引き上げられ、16年以降は800ドル(約12万円)とされている。中国との戦略的競争に関する調査、提言を行う連邦下院中国特別委員会が23年6月に発表した報告書によると、デミニマス規定が適用された22年の米国宛て貨物の30%をティームーとシーインが占めている。同特別委はデミニマス規定が関税の抜け穴となって米国企業を不当な競争にさらしてい…

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