大統領選の争点となる移民問題 国境警備強化法案で強まる舌戦 嶋田恵一
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15州の予備選・党員集会が集中する「スーパーチューズデー」を直前に控え、バイデン大統領とトランプ前大統領は2月末、テキサス州の南部国境地域に入った。バイデン氏は国境警備隊を慰労し、トランプ氏は国境地帯を視察し、演説を行った。
両者は昨年9月末にも、各地でストを決行していた全米自動車労働組合本部があるミシガン州に入り演説を行っている。この時の議題は、雇用と賃金をめぐる経済、産業政策であった。約半年を経て、今は移民問題が大統領選挙において主要な争点になりつつある。
年間250万人を記録
バイデン政権はトランプ政権時代の規制を撤回した上で、年間受け入れ難民数の上限引き上げなど、移民に対して寛大な政策を行っている。昨年は南部国境での移民は年間250万人と過去最高を記録し、12月には単月で越境者が約30万人に達した。移民の多くは、政情不安を抱える中南米地域からの出国者である。
こうした中、連邦議会では2月初め、不法移民の流入を制限する超党派の国境警備強化法案が上院で議論されていたが、共和党の反対で否決された。移民問題をバイデン氏批判の主要議題にするため、課題解決の動きを止めたいトランプ氏が共和党に働きかけたという話がある。移民政策が連邦政府の専権事項であるため、取り締まりができない南部の州では、一部共和党系州知事が、都市圏を抱える民主党系の州に向けて、移民をバスで送り出す施策を始めた。
米国はこれまで幅広く移民を受け入れてきた。主な受け入れ先の都市部では、日々の生活や消費活動を支えるエッセンシャルワーカーの多くを移民が担ってきた。
ワシントンDCもその都市部の一つである。先日、事務所ビルのエレベーターで清掃員の女性と一緒になったので、「今日は寒い一日でしたね」と声をかけてみた。すると、英語があまり話せないというようなことを、にこやかに身振りとスペイン語で応えてくれた。ワシントンで仕事…
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週刊エコノミスト
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