米国で進む「脱中国」と「分断」は日本の好機では 多田博子
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希望と不安が入り交じる新年度スタートとなる日本の4月。だが、米国では新年度の緊張感を味わうことは少ない。政府の会計年度は10月~9月。企業の事業年度は1月~12月が多いが、統一されていない。学校は9月~6月が多く、州によって異なる。日本のように政府・企業・学校が新年度に一斉にスタートする国は、世界でもまれである。
米国では7月4日の独立記念日や11月第4木曜日の感謝祭などのイベントでは盛り上がるが、新年度を境に「よし、今日から新しいスタートだ」と皆の気持ちが一つになる習慣はない。南北戦争以来最悪とも評される米国の分断は、接戦が予想される11月の大統領選でマグマが沸点に達しそうな気配を感じさせる。トランプ氏の復活を視野に、「関税増や防衛費増を要求され、日本の立場は弱くなるのではないか」「仮にパリ協定離脱となればバイデン政権の脱炭素ビジネス支援策はどうなるのか」などと不安の声が多く聞かれる。
港湾のクレーンに警戒感
それでも現在の米国には日本の存在感を高めるチャンスがあることを指摘したい。ポイントはまず「脱中国」である。トランプ政権で進められてきたこの政策は、対中投資の鈍化や、中国以外の国へ製造拠点を移すグローバルサプライチェーン上の脱中国のみならず、米国内でも着実に進んでいる。
例えば、米国の港湾の多くで使われていた高度ソフトウエアを搭載した中国製クレーンは、犯罪的攻撃によりデータが暗号化されて利用できなくなるという安全保障上のリスクがあるとして、日本製のクレーンに差し替えられることになった。今後5年間で200億ドル以上が港湾セキュリティー向上に割り振られる予定である。中国の穴を…
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