日米友好の象徴「ポトマック川の桜」一部除去へ 西田進一郎
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米首都ワシントンの春の風物詩と言えば、ポトマック川沿いの桜だ。入り江である「タイダル・ベイスン」の周囲は、3月から4月の開花時期には多くの見物客でにぎわう。今年満開になったのは筆者も現地を訪れた3月17日。国立公園局によると暖冬の影響で記録的に早かったという。
付近一帯の約3700本の桜は、1912年に東京市(当時)が寄贈した約3000本の苗木が発祥で、日米友好の象徴として広く知られている。ちなみに、米国側がこの時、返礼として送ったのはハナミズキだ。日比谷公園などに植樹された。
100年を超える歴史を持つタイダル・ベイスンの桜だが、満開になる時期は、地球温暖化の影響で徐々に早まる傾向にある。米環境保護局(EPA)の資料によると、1921年から2022年まで102年間の平均は4月4日。しかし、過去20年間のうち、4月4日より早く満開になったのは16回。平均では7日程度前倒しになっているのだという。
温暖化で「洪水」が頻発
温暖化はポトマック川から流れ込む水面の上昇も引き起こしている。その一方で、入り江を縁取っている防潮堤は、19世紀後半から20世紀前半にかけて建設されたもので、この間に5フィート(約1メートル52センチ)以上沈んだ。この結果、タイダル・ベイスン周辺の一部は、1日に2回の満潮時に「洪水」に見舞われるようになった。
樹木周辺の土壌に水がかかりすぎれば、土壌の酸素は少なくなる。根が水にさらされるようになり、徐々に枯れる桜も出てきた。ソーシャルメディアなどを通じて有名になった通称「スタンピー(切り株)」もその一本だ。タイダル・ベイスンの南側にある背丈の低い桜で、幹全体は枯…
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週刊エコノミスト
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