バイデン政権がLNG輸出の承認を一時停止 背後に民主党内の政治的均衡 平田智之
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バイデン政権は1月26日、自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への液化天然ガス(LNG)の輸出承認を一時的に停止すると発表した。米国ではLNG施設の整備にあたり、輸出に関する承認プロセスが必要とされるが、非FTA締結国向けの場合、米天然ガス法上、その輸出が「公共の利益」に合致するか否かが承認の要件とされている。経済、エネルギー安全保障、環境への影響などの分析が承認の判断基準に掲げられており、最近のLNG輸出を取り巻く環境の変化を踏まえ、その分析手法をアップデートする必要があるというのが今回の措置の理由である。
予兆はあった。元々、環境保護を掲げる民主党プログレッシブ派(急進左派)は、原油ガス開発・輸出はバイデン政権の脱炭素目標と合致していないと批判的だったが、最近のアラスカ州での原油開発やウェストバージニア州の天然ガス輸送用パイプラインへの承認に対して、さらに不満を募らせていたとされる。昨年11月には、上下両院の総勢65人もの民主党議員が、先述の影響分析手法が十分でないとして、プロセスや基準の見直しを求める書簡を出していた。
環境保護派は評価も……
環境保護派からは、今回の政府発表について「重要な第一歩」と称賛する声が上がっている。2020年の大統領選でバイデン氏に投票した18%が気候変動を最優先課題としているとする世論調査もあり、発表は一定程度選挙に向けた追い風になるのであろう。
他方、米国ガス協会などの業界団体や共和党議員からは米国による同盟国へのエネルギー供給の「確からしさ」や米国産ガスが世界のCO₂排出量削減に貢献している状況を損なうことを懸念する声が上がっている。26人の共和党上院議員は「近視眼的な取り組みをやめるべき」との書簡を出した。
興味深いことに、こうした懸念の声は民主党側からも上がっている。2月頭には産ガス州であるペンシルベニア州選出の民主党上院議員2…
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週刊エコノミスト
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