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経済・企業 バブル超え 日本の実力

日独逆転《私はこう見る》政府の政策失敗と企業の安売りに起因 小林俊介/土屋諒太郎

「生産性の向上」を阻む政策の失敗を反省し、エネルギー自給率の改善に努め、企業は「安売り競争」からの転換が急務だ。

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 日本のドル建て名目GDP(国内総生産)は2023年に世界4位へと後退し、ドイツに逆転を許した。23年の名目GDPは、ドル換算で日本が4兆2106億ドルとなり、ドイツの4兆4561億ドルを下回った。

 各国間のGDP水準は、その数字のみを単純に比較できるものではない。GDP世界1位の米国や2位の中国は、日本に比べて国土も広く、人口も大きい。しかし日本とドイツを比較すると、国土面積はほぼ同一だ。両国とも製造業がGDPに占める割合が約20%であるなど経済構造も似ている。その上、ドイツの人口は日本の3分の2程度に過ぎない。

 それにもかかわらず、なぜドイツに逆転を許したのか。確かに為替レートの影響は大きい。22年、23年に発生した円安が、ドル建てで見た日本のGDPを縮小させた。しかし、本質的な問題は為替レートとは異なるところにある。各国の財・サービスの値段を交換比率として用いる購買力平価ベースの名目GDPで比較しても、日本はドイツに迫られ続けている。

 そこで本稿では、日独GDP逆転の本質的な背景を真摯(しんし)に分解・分析した上で、今後に生かすべき教訓を整理する。

3要素全て劣後

 まず、名目GDPは実質GDP(数量要因)とデフレーター(価格要因)に分解される。いずれの指標においても、日本の成長率はドイツに劣後し続けてきた。このうち前者の実質GDPをさらに分解すると、①資本投入と②労働投入、③TFP(全要素生産性と呼ばれ、資本投入と労働投入で説明できないGDPの変動要因を指す)に分解される。残念なことに、これら3要素全てにおいて、日本はドイツの後塵(こうじん)を拝している(図1)。

 これら3要素のうち、①資本投入は、②労働投入と③TFPの従属変数である。使いこなせる従業員のいない会社がスーパーコンピューターを設置しても、売上高の増加には全く寄与しないためだ。従って日本の問題は資本投入以外の2要素にこそある。

 労働投入で日本がドイツに劣後した背景には、当然、日本の人口減少がある。しかし、ドイツでも自国民の人口は05年にピークをつけており、両国の差は必ずしも大きくない。結局、ドイツとの比較から浮かび上がる日本の問題は、TFP成長率の伸び悩みなのだ。

 それではなぜ、日本のTFP成長率はドイツに劣ったのか。ここで大変興味深い事実は、日本のTFP成長率がドイツに劣後したのは1995~2011年であり、12年以降はドイツに引けを取っていないということだ。

 95~11年における日本の問題は何であったか。TFP成長率をさらに業種別に分解すると、(1)相対的に生産性が高い金融・保険業などへの労働力移動が進まなかったこと、(2)情報通信業など先進国でけん引役となった産業で日本の生産性の伸びが鈍かったこと、(3)電気・ガス産業などで生産性が低下したことが寄与している。

 言わずもがな、(1)(2)はバブル崩壊および金融危機の余波である。そして(3)は震災後に発生した原発事故の影響を受けたものだ。つまり、日本は危機を回避することができず、自滅してしまったのである。

「生産性の向上」は、日本経済を語る際に耳にタコができるほどうたわれるテーマだ。そして、その具体策として挙げられるのは、得てしてDX(デジタルトランスフォーメーション)やリスキリング(学び直し)といった、地に足のつかない産業政策である。しかし虚心坦懐(たんかい)に振り返る限り、…

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週刊エコノミスト

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