日独逆転《私はこう見る》GDP減少より1人当たり所得が増えなかった事実が重要 小峰隆夫
有料記事
日独の名目GDP(国内総生産)逆転劇にはいろいろな要素があり、さまざまなストーリーが描ける。何も気にする必要はないともいえるし、日本の大きな問題点が表れているとも指摘できる。別の指標でしっかり見直したほうがいいともいえる。
>>特集「バブル超え 日本の実力」はこちら
日本のGDPは1995年まで右肩上がりで上昇してきたが、その後は上下にぶれるようになった(図)。日本は2012年の6.2兆ドルをピークに23年は4.2兆ドルにまで減少。一方、23年にドイツは4.4兆ドルとなり67年以来56年ぶりの日独逆転となった。
日本はピーク時から2兆ドルも落ち込んでいるが、そこまで経済が悪化したわけでもない。これは円安が原因だ。12年は1ドル=79.8円、23年は1ドル=140.5円。この急激な円安によってドル換算のGDPが大きく落ち込んだ。
ただし、円安に日本の構造問題が潜んでいるという指摘もできる。ドイツは00~23年の平均成長率が実質1.1%、名目2.9%。これに対して日本は実質0.7%、名目0.5%だ。24年間のこの成長率の差が逆転劇を生んだともいえる。つまり、日本の長期景気停滞とそれが円安をもたらしているという見方だ。長年の課題である構造改革が進まず、生産性の低迷を浮き彫りにしている。
人口減だから低成長ではない
もう一つの視点はドイツの人口が8416万人に対して、日本は1億2615万人というものだ。
10年に中国に抜かれて3位になったが、しばらくは3位を維持できると思った。次に抜かれるのはインドだろうと。中国もインドも日本の10倍以上の人口があるから1人当たりGDPが日本の10分の1以上になれば抜かれる。ところが、人口が日本の約7割のドイツに逆転された。これは私にも意外だった。
しかし、ドイツにGDPを抜かれたから日本人が不幸になったわけではない。GDPの規模を競うことにそもそも意味がない。経済規模が大きいから国民が幸せになるか。スウェーデンはじめ北欧諸国は日本よりGDPが小さいから不幸せかといえばそうではない。1人当たりの所得がより重要だ。
政府の少子化対策(少子化基本戦略…
残り843文字(全文1743文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める