EV新モデル投入とEV販売復調の同期を狙う日本メーカー HV需要も見込む 河村靖史
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EVシフトに大きく出遅れた日系自動車メーカーは、生き残りをかけて、他社との連携も辞さない構えだ。
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ホンダと日産自動車は3月15日、戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結した。電気自動車(EV)のコアコンポーネントであるリチウムイオン電池や駆動用モーターシステムの共通化などを検討する。「水と油」とも例えられるほど、社風も車種も大きく異なる両社が提携するのは、電動車時代に生き残るためだ。
ホンダは2040年までに販売する四輪車はEVと燃料電池車(FCV)のみと宣言。日系自動車メーカーの中では唯一、内燃機関(エンジン)車から撤退する時期を明確に打ち出しており、焦りの色は濃い。当面の目標として30年までにグローバルでEVを30モデル展開し、EVの年間販売台数200万台以上を掲げる。
この実現に向けて頼りにしてきたのが米GM(ゼネラル・モーターズ)だ。ホンダはGMのEVをベースに共同開発したEV「プロローグ」を年内に北米市場に投入する。これ以外にホンダはGMと量産価格帯のEVを共同開発して27年に世界の各市場に投入する計画だったが、戦略の不一致から共同開発計画が中止になった。
EVの戦略市場である中国でもホンダは失敗している。現地の広州汽車、東風汽車それぞれの合弁工場で複数のEVを生産・販売しているものの、BYDなどの低価格EVに売り負けており、販売は苦戦している。ホンダは中国市場のみ、内燃機関車の撤退時期を35年と、世界より5年前倒ししており、EVの市場投入を急ぎ、EV販売を大幅に伸ばすことをもくろむが、実現のハードルは高い。
部品共通化で車両価格下げ
今回、ホンダが日産との協業を検討するのは、EVの基幹部品を共通化すれば、EVの販売が伸びない理由の一つである高い車両価格の引き下げにつながる可能性があるからだ。ホンダの三部敏宏社長は「30年にトップグループと、伍(ご)して戦うにはシナジー(相乗効果)による価値創造とスケールメリットが重要」と語る。
一方の日産は10年12月に量産型EV「リーフ」を市場投入したが、カルロス・ゴーン元会長の追放やルノーとの資本関係見直しなど、経営のゴタゴタが続いたこともあって、EV戦略どころではなく、対応は完全に後手に回った。戦略モデルとなるスポーツタイプ多目的車(SUV)タイプのEV「アリア」も半導体不足などから生産できない期間が続くなど、出足からつまずいた。中国市場では18年に日産ブランド初のEVとして「シルフィ・ゼロエミッション」を投入したが、販売不振で生産中止となった。
日産は30年までに34の電動車(ハイブリッド車〈HV〉含む)を市場投入し、グローバルでの電動車販売比率を60%とする計画で、EVだけの販売目標は示していない。EVよりもエンジンを発電機として活用するシリーズ式HVの「eパワー」の需要を見込んでいるためだ。
日産はNECと協業していた車載用リチウムイオン電池の生産・販売会社「AESC」を、ゴーン元会長が中国の再生可能エネルギーを手がけるエンビジョングループに売却したこと…
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週刊エコノミスト
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