値引きのテスラに値上げのトヨタ 時価総額逆転が視野に 遠藤功治
有料記事
HVが好調な日本メーカーの株価が上昇している。トヨタとテスラの時価総額の差が縮まり、逆転も視野に入った。
>>特集「EV失速の真相」はこちら
ホンダと日産自動車が電気自動車(EV)で協業することを発表したが、このようなバッテリーEV(BEV)領域における提携話は枚挙にいとまがない。しかし足元のBEV販売には変調の兆しが見えている。すなわち、中国でも米国でも欧州でも、明らかにBEV販売の伸びが鈍化している。また中国のように表面上はなお2桁の販売増が続いている市場でも、収益性が全く伴っていない。中国では大半のBEV専業メーカーが平均20%の値引きで押し売り販売中だ。2024年に入ってからも、10以上のメーカーが更なる値引きを発表している。
補助金打ち切りで失速
欧州ではかつてBEVが市場を席巻していたスウェーデンやノルウェーなどで、23年秋以降相次いで補助金が撤廃された。ドイツでも予定を早めて23年末までに補助金が打ち切りとなった。打ち切りは各国の苦しい財政状況が主要因で、補助金が打ち切りになると即、販売が落ち込むという、BEV販売の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した。
米国ではインフレ抑制法(IRA)などの補助金を得るためには、非常に高い現地調達率や電池材料の厳しい規制があり、補助金を得るためのハードルが非常に高い。またその品質や修理コスト、保険料、中古車価格などで、いまだに消費者の信頼を得ていない。結果、初代プリウスから27年を経て、トヨタ自動車やホンダのハイブリッド車(HV)販売が新記録を出すほど売れ出している。
図1は世界の主要自動車会社25社の、23年末から足元までの株価騰落率であるが、最も下げているのはテスラなどのBEV専業4社である。テスラは年初来34.2%、値を下げ、足元その下がり幅が加速、米国の「マグニフィセント・セブン」から脱落しつつある。
その反対に株価が最も上げているのはトヨタで、SUBARU、ホンダなど他の日系メーカーの株価もそろって上位に来ている。23暦年でもその優劣はほぼ同様で、日本の株式市場に資金が移動している中で、自動車株も例外ではない。つまり、BEVの減速とともに、テスラからトヨタへ、中国から資金が日本に移動する過程で、BYDからホンダに、自動車株のポジションが移動しているのである。
筆者は以前にも、本誌でテスラとトヨタの時価総額再逆転の可能性について触れたことがある。約5年前に、テスラがトヨタを時価総額で逆転、一時期、テスラはトヨタの4倍の時価総額を誇ったのだが、足元では1.3倍程度までその差は縮小した。トヨタ株が上場来高値を更新する中で、テスラ株は最高値400ドルからこの2年間で足元160ドル台と半値以下にまで下落した。両社の時価総額再逆転の日が、想定を上回って近々見ることができるかもしれない。
図2は、トヨタ対テスラの時価総額…
残り1065文字(全文2265文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める