半導体ブームは始まったばかり 急ピッチなIT進化で市場も拡大 津田建二
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世界の半導体市場が拡大を続けるのと対照的に、日本は停滞を続けていた。それでも救いがあるのは、製造装置や関連材料の企業が強い点だ。
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半導体がブームになっている。そして、生成AI(人工知能)も世界的なブームだ。こういった動きは一過性のものか、あるいは数十年にわたって続くものか。もちろん後者が正しい。いずれも今、始まったばかりといってもよいほどのテクノロジーだからである。ここまで書いても信じる人は少ないかもしれないが、半導体産業の現状と将来に向けた展望について述べていきたい。
半導体産業が今、始まったばかりともいえる理由は、半導体のけん引役が従来の電気機械からITへシフトしたためだ。電気製品は完成品を一つ作ってしまえばそれでおしまいだが、ITはアップデート(更新)という作業が必ず必要であり、進化がどこまでも続いていく。製品の想定寿命が15年以上というクルマでさえ、アップデートできるようにするSDV(ソフトウエア定義のクルマ)の時代が来るといわれている。
改めてITという産業のテクノロジーを見てみると、①コンピューター、②通信、③半導体──の三つがカギになっていることが分かる。コンピューターは一つのハードウエアプラットフォームの上で、アプリ(アプリケーションソフトウエア)を追加すると機能が追加される。パソコンもスマートフォンもハードウエアプラットフォームである。もちろんサーバーも言うまでもない。コンピューターと通信の頭脳部分を押さえるテクノロジーはいずれも半導体である。
これらのITの3大要素は誕生(1946~48年に集中)して以来、互いに少しずつ絡みながら発展してきた。当初、これらの要素はバラバラだった。コンピューターはメインフレーム(基幹システムを扱う大型コンピューター)から始まり、パソコンへと発展してきた。半導体は電気機械を最大用途としてメインフレームとともに発展した。通信はアナログ式の固定電話からデジタル方式に代わり、さらに携帯電話へと発展してきた。
これらの歴史の中で、最も大きなイノベーションは、米インテルのマイクロプロセッサーとメモリーの発明であった。これ以来、半導体とコンピューターが強く結び付き、インテルによるPCI(コンピューター内部で関連装置を結ぶデータ伝送路の規格)の提唱により通信機能と結びついた。
「設計」と「製造」分化
一方で、半導体産業のこれまでの歴史を見ると実は、分業化の歴史であった(図1)。最初は総合電機メーカーの中の一研究部門から始まり、結晶や製造装置などを製造し、半導体製造プロセスを発明し、組み立て技術を1社ですべて賄っていた。しかし、半導体の原料がゲルマニウムからシリコンに代わり、個別のトランジスタからIC(集積回路)へと発展し、東京エレクトロンのような製造装置メーカーが生まれた。
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週刊エコノミスト
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