習政権襲う55兆元の巨大債務 地方政府に忍び寄る金融危機 三浦祐介
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中国にとって目下の最優先課題は不況が長期化する不動産市場のリスク解消だが、重要度の面でこれと並ぶ難題がある。地方政府の「隠れ債務」問題だ。
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中国の地方政府は、公共投資に必要な財源の不足を補うため、「融資平台」と呼ばれる日本の第三セクターに類似した法人を設立し、そこが銀行融資や起債などの資金調達を行ってきた。これが土地使用権の売却収入とともに、地方政府の重要な財源となっている。融資平台の債務は、公式には地方政府の債務としてカウントされない。だが、融資平台債務の背景には暗黙の政府保証が存在しており、事実上、地方政府が返済責任を負う可能性があることから、隠れ債務として位置付けられている。
この隠れ債務は、過去にさかのぼると1979年から発生していたようだが、景気悪化に伴い経済対策がとられた時期を中心に拡大している。特に4兆元(当時のレートで約57兆円)の景気刺激策が実施された2009年に急増したことで、その存在が広く知られ、11年に実施された審計署(会計検査院)による調査を経て、債務の規模など全貌が明らかになった。
以後、隠れ債務の増加に歯止めを掛けるべく、融資平台による資金調達を禁じる一方で、地方政府が地方債を発行して財源を調達できるようにするなど、相次いで対策が講じられた。
しかし、地方政府はそのたびに規制の抜け穴を通じて隠れ債務を増やし続けてきたのが実情だ。結果、隠れ債務の規模は、国際通貨基金(IMF)の試算によれば、22年時点で55兆元(GDP比46%)と、地方政府の正式な債務(35兆元)を上回る水準となっている。
非効率な公共投資
過去の非効率な公共投資の結果、不採算のインフラを抱え資金繰りに苦しむ融資平台は少なくない。今後、人口減少の進展に伴い、インフラ経営を巡る環境は厳しくなることが予想され、融資平台向け融資の不良債権化や債券のデフォルト(債務不履行)といった隠れ債務発の金融不安のマグマはたまり続けていくだろう。また、資金が非効率な融資平台に滞留し、今後の経済を支える新産業に回らないことは、中長期的な成長の観点からも望ましくない…
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週刊エコノミスト
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