今年の中国は成長率3%か 抜本改革をしない習政権 柯隆
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2020年のコロナ禍前、世界中の多くのシンクタンクは中国の名目国内総生産(GDP)は遅くとも30年までに米国を追い抜いて世界一になると予測していた。コロナ禍が終わって、中国経済はV字回復すると思われたが、実際は回復力が弱い。
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中国政府は昨年の実質GDP成長率を5.2%だったと発表したが、米調査会社ロジウム・グループは23年12月、「依然として縮小する不動産セクター、個人消費の限界、貿易黒字の減少、疲弊する地方政府の財政状況という現実を考えれば、実際の23年成長率は1.5%程度だろう」とするリポートを発表した。米調査会社ユーラシア・グループは「24年10大リスク」の6番目に「回復しない中国」を挙げた。
振り返れば、中国経済の高度成長期のピークは10年ごろと見られる。習近平政権が正式に発足した13年3月以降、中国経済は減速の一途をたどっている(図1)。
政府の失敗が原因
中国経済が失速した原因は、短期と長期の両面にあると思われる。
まず、短期的な要因は何といってもコロナ禍だ。もっとも、これは市場の失敗というより政府の失敗が原因といえる。新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、広範囲・長期間のロックダウン(都市封鎖)を強いたゼロコロナ政策は需要を大きく押し下げた。とりわけ、強引かつ不必要な隔離措置を多発したことで数百万社の中小零細企業が倒産したとされている。
例えば、中国経済紙『第一財経』(電子版)は今年1月19日、昨年1月から同12月23日までの間、外食業の廃業件数は前年同期比2.1倍の126万5300件に上ったとする信用調査会社「天眼査」のデータを伝えた。
職を奪われた人が続出し、16〜24歳の失業率(全国、都市部)は昨年4〜6月に20%を超えた。そのような経済状況を背景に一般家庭は生活防衛に走り、消費を手控えている。
李強首相は3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に出席して読み上げた政府活動報告で、目下の中国経済は深刻な需要不足に見舞われていると明言した。しかし、どのように需要を喚起するかについての具体策は示さなかった。
長期的な要因はどうか。中国経済は産業構造を高度化しなければならない重要な節目に差し掛かっているが、産業構造の転換は大幅に遅れている。その結果、中国経済をけん引するはずの生産性は改善されにくい。
デマンドサイド(需要側)とサプライサイド(供給側)の両面で問題がはっきりと見えているのに、習政権は抜本的な改革を進めようとしないのだ。
バブル崩壊とデフレ
コロナ禍をきっかけに中国の内需が落ち込み、ずっと心配されていた不動産バブルの崩壊が現実となった。現在、不動産価格は下落しているが、大暴落とはなっていない。政府が価格をコントロールしているからである。
不動産バブルの実態を判断するには不動産価格の動向だけでなく、不動産開発会社のデフォルト(債務不履行)や倒産の状況も見るべきだ。
不動産開発大手の中国恒大集団(エバーグランデ)は21年にデフォルトした。今年1月29日には、恒大が上場する証券取引所がある香港の高等法院(高裁)が同社に清算命令を出した。債務超過に陥っていた同社に裁判所が清算命令を出すまで時間がかかったのは、中国政府が救済に乗り出すかどうかを見極めようとしたからだろう。結局のところ、中国政府は救済しなかった。
恒大の倒産は氷山の一角にすぎない。香港証券取引所は4月2日、不動産開発大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン)株の取引を停止した。同社が23年12月期決算を期限までに開示しなかったからだ。碧桂園の販売成約額は3月、前年同月比83%減に落ち込んでいる。不動産市況の低迷が長期化すれば、これから不動産開発業の倒産は続く可能性が高いと思われる。
不動産バブルが崩壊したのを受け、中国の消費…
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週刊エコノミスト
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