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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

若者の価値観に合わせようとするとギクシャクし、人間関係がうまくいきません/208

木村敏(1931~2021年)。日本の医学者、精神科医。専門は精神病理学。人間存在を探究し、独自の人間学を構築した。著書に『自己・あいだ・時間』などがある。(イラスト:いご昭二)
木村敏(1931~2021年)。日本の医学者、精神科医。専門は精神病理学。人間存在を探究し、独自の人間学を構築した。著書に『自己・あいだ・時間』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 若者の価値観に合わせようとするとギクシャクし、人間関係がうまくいきません 最近どうも人間関係がうまくいきません。若い人の価値観は違うからそれも面白いのではと思って、できるだけ合わせるようにしてはいるのですが、ギクシャクしてしまいます。(ホテル勤務・50代男性)

A 生命を形作る根源的なものは常に変化し、人はそれに影響されていることに気づこう

 人間関係は最大の悩みですよね。ある程度の年齢になると、自分というものもよくわかってきますし、さまざまな経験から相手に合わせることもできるようになるはずなのに、なぜかうまくいかない。それだけ複雑なものなのです。

 そこで参考にしたいのは、日本の精神科医木村敏の思想です。木村は精神病理学を専門としていますが、その考察はまさに哲学だといっていいでしょう。その木村が終生テーマとした人間存在を考えるうえでキーワードとなっているのが「あいだ」です。

水平・垂直の関係を築く

 普通は“間”という漢字を当てますが、木村独自の思想用語としてはあいだと平仮名で表記します。なぜなら、これは単純に何かと何か、人と人の間を意味するものではないからです。私たちが何かと何かの間という時、あくまでその何かに着目していますが、木村のいうあいだは、あいだそのものに着目しているのです。

 いわばそれは何かを生み出す運動だといっていいでしょう。たとえば木村によると、「自己」もまた生命一般の根拠ともいうべき根源的なものから立ち現れているのです。この運動こそがあいだにほかなりません。だから他者との水平的な人間関係の前に、そもそも自分がすでにそうした根源的なものと垂直的な関係を持っており、そ…

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