教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

職場で実のある議論ができない/209

ジェイムズ・フィシュキン(1948年~)。アメリカの政治学者。 スタンフォード大学熟議民主主義センター所長。専門は熟議民主主義。討論型世論調査の設計で知られる。著書に『熟議の日』などがある。(イラスト:いご昭二)
ジェイムズ・フィシュキン(1948年~)。アメリカの政治学者。 スタンフォード大学熟議民主主義センター所長。専門は熟議民主主義。討論型世論調査の設計で知られる。著書に『熟議の日』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 職場での議論が形骸化。実のある議論をしたいのだが 会議などで行う職場での議論が形骸化しています。皆結論ありきで話しているようにしか思えません。どうすればもっと実のある議論ができるでしょうか?(商社勤務・50代女性)

A 意思形成を重視して合意を得る「熟議」を重ね、問題解決の糸口見つけよう

 日本ではあまり議論をする文化はありませんよね。これは国会から企業、地域社会まですべての次元の集団に当てはまります。そのせいで、実のある議論の仕方が浸透していないように思います。議論は結論を出すためにあると思いがちですが、それでは議論が形骸化するのもやむをえません。本当はプロセスこそが重要なのです。

 そこで参考にしたいのは、アメリカの政治学者ジェイムズ・フィシュキンの熟議に関する考え方です。熟議とは、徹底的に討議することをいいます。それによって合意を形成し、集団が問題を解決することを目的としています。

 とりわけフィシュキンは、熟議を政治の議論に適用し、熟議民主主義の実現を提唱しています。たとえば、参加者が小グループに分かれて議論し、その後に投票するという討論型世論調査の提案はその一つです。これは通常の民主主義が意思決定を重視しているのに対して、むしろ意思の形成に重点を置いているといっていいでしょう。

自らが行司役になろう

 そのため彼は、議論には次の五つの要素が必要だといいます。つまり①情報(争点に関係する正確な情報がどれほど参加者に与えられているか)、②実質的なバランス(一方の見地から出された意見を、反対側がどれほど考慮するか)、③多様性(世間の主要な立場が議論の中で参加者にどれほど表明されてい…

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