週刊エコノミスト Online 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

職場の性格の悪い先輩。どう対処すればいいですか/210

スコット・ハーショヴィッツ。アメリカの哲学者。哲学のほかロースクールで法律を学んだ経験から、法律と道徳に関する研究を行っている。著書に『Law Is a Moral Practice』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)
スコット・ハーショヴィッツ。アメリカの哲学者。哲学のほかロースクールで法律を学んだ経験から、法律と道徳に関する研究を行っている。著書に『Law Is a Moral Practice』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 職場の性格の悪い先輩。どう対処すればいいですか 職場に誰もが認める、すごく性格の悪い先輩がいます。もめると仕事がしにくくなるので嫌なのですが、黙っているとストレスがたまる一方です。どうすればいいでしょうか?(デザイン会社勤務・20代女性)

A 名誉守るための「二度目の悪」という概念をもとに、適切な復讐を試みよう

 誰かに相談するのが一番でしょうが、それで解決すれば苦労はしませんよね。また実害があるなら別ですが、単に意地悪なだけだとなかなか問題になりにくいということもあります。では、どういう態度を取ればいいか?

 今回参考にしたいのは、アメリカの哲学者スコット・ハーショヴィッツの「復讐(ふくしゅう)」に関する考え方です。普通復讐と聞くと、いけないことのように思うでしょう。「悪に悪を返しても善は生まれない」と。しかし、ハーショヴィッツは「悪に悪を返せば善が生まれることもある」といいきります。

 なぜなら、そもそも悪に対して黙っていることは、自尊心を傷つけることになるからです。抵抗しないと、周囲からその悪に甘んじざるを得ない存在だと思われてしまいます。自分自身もそう思い始めるかもしれません。

嫌なことは嫌と言う

 だからまずは悪に対して怒りを示す必要があるのです。そのうえで、きちんと抗議の意思を示さなければなりません。それは、むしろ正しい行いでさえあるのです。現にハーショヴィッツは、先ほどのスローガンにさらにこう付け加えています。「二度目の悪は、やり過ぎないかぎり、じつはまったく悪ではない」と。

 行為の道徳的な質は、それが何を伝えるかによって決まるというわけです。同じ言葉でも、他者を貶(おと…

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