国際・政治 ストップ!人口半減

高齢者の住まい「コ・ハウジング」に学ぶ 福澤涼子

 すでに日本では高齢者の3割以上が単身世帯。孤立を防ぐべく、元気なうちは「共同住まい」という選択肢が注目されつつある。

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 高齢者の孤立が問題視されている。国立社会保障・人口問題研究所が4月12日に発表した世帯数の将来推計によると2050年には65歳以上の高齢単身世帯が全世帯の20.6%に達する。5軒に1軒が一人暮らしの高齢者という計算だ。

 大きな背景の一つが家族の変化だ。未婚者や子どものいない人が増えている上、子どもがいても同居しないケースも多く、すでに高齢者のいる世帯の3割以上が単身世帯である。他につながりがあればよいが、単身世帯は他のつながりも少ない傾向にある(図1)。

 これは日本だけの問題ではない。例えば、同じく高齢化が進むデンマークは日本よりも高齢者の独居割合が高く、子どもが親の面倒をみるという価値観も薄い。そのため同国でも問題となっている。

 そこで一つの解決策として高い注目を集めるのが、「コ・ハウジング」という住まいだ。プライベートな生活空間と共有スペースを組み合わせ、近隣同士の交流を奨励するものだ。共同のキッチンやダイニングなどで生活の一部を共有し、一般的な住宅と比べて深い関係を築くことができる。

入居待ち5〜7年

「コ・ハウジング」では若い世帯の居住も想定されており、高齢者の介護が主眼ではない。それでも孤独感の解消、交流を楽しむ、何かあった際に助け合うなどの効果が期待される。同国では非常に人気が高く、22年時点で少なくとも385カ所(一部建設中)、約1万1000戸の住戸が存在するが、入居待ち人数は8000人にものぼると推定されている。入居まで5〜7年かかることも珍しくなく、同国最大の高齢者ボランティア団体「高齢者問題全国連盟(Ældre(エルドア) Sagen(セーエン))」は、50代で検討・決定するよう呼び掛けている。

 またコ・ハウジングは同じく北欧のスウェーデンや、西欧のドイツ、スペイン、オランダなどでも見られるようになってきている。

 日本にも高齢者向けに「グループリビング」という類似した住まい方があり、全国に少なくとも…

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週刊エコノミスト

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