34歳以下の未婚女性の3割が“非婚就業”の人生を予想した理由を考える 永瀬伸子
有料記事
「子どもは欲しくない」という社会は悲しい。若者が子育てに希望を持てるよう、社会全体で支援することが求められている。
>>特集「ストップ!人口半減」はこちら
日本の合計特殊出生率が再び落ち、一昨年は1.26という過去最低を記録した。しかも、未婚男女の結婚・出産意欲が大きく落ちているという数字が出てきた。国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」の2021年の結果で一番驚いたのは、34歳以下の未婚女性の3人に1人が予想のライフコースとして「非婚就業になるだろう(つまり結婚・出産せず仕事を続ける)」と回答したことだ。もっともそれが理想だとまでは言っていない。理想の1位は初めて「仕事と家庭を両立する」となった。
この同じ調査では、継続的に未婚者に希望子ども数も聞いている(表)。子どもを希望しない、すなわち0という回答が5%前後の時代が05年、10年と続いた。男性の賃金が低迷した00年代のはじめは、まず男性で「希望子ども数0」が8%へと増えたのだが、今回目立ったのは、女性で「希望子ども数0」が増え13%になったことである。また長らく「希望子ども数2」以上が多かったが、「希望子ども数1」もやや上がっている。
これまで多くの20代から30代の働く女性に対して、仕事と家庭について聞き取りをしてきた。正社員女性の仕事と家庭の両立は以前に比べればより容易になっている。実際に子どもを持って正社員で仕事をする大卒女性は大きく増えている。しかしタイミングは難しく、また両立負担は主に女性が担っている。
育休後の待遇改善に課題
ちなみに筆者は、お茶の水女子大学のゼミ生と20人の育児休業復帰者へのインタビュー調査をした(永瀬他[2021]「女性のキャリア形成における課題─2010年以後の育児休業取得者へのインタビューを通して」)。筆者の感想は女性の職場復帰について「随分良くなったな〜」だったが、学生の感想は、「こんなに両立は大変なのか!」というものだった。また育休をとったからといって評価が下がるのはおかしいというものでもあった。
男性が育休をとって応分に子育てを分担できるような雇用慣行の改革や社会規範の醸成はまだまだだ。しかしこれも変わらないと就業女性は子どもを持ちにくい。学生が話を聞いて、「できそうだな」と思えるような働き方にしないとならない。
最近の若者の意識はさらに変化していると感じている。大学生に聞くと、子どもをうまく育てられるかわからない、子育ては大変だ、などという。自分がかけてもらったようにお金をかけられないのならば、子どもを持つのはエゴだとさえいう。その一方で、女性も安定した仕事をして働き続けたいという意識が高まり、子育てはリスクに見えるようだ。実際のところ、子どもを持つと現在の日本では女性が主に家事育児負担を担う。その上、離婚リスクが増えている。シングルマザーはその半数が貧困にあり、離婚の可能性を考えると一層、子どもを持つことはリスクに思えるようだ。さらに依然として非正規雇用の若い男女も少数ではない。先の見通しが持てず、収入が低く、家族形成は考えにくい。
ただ実は子どもが欲しいという意識は変化するのだ。筆者は毎年同じ人を追跡調査する厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」を分析してきた。この中に「絶対に子どもが欲しい」「子どもが欲しい」「どちらともいえない」「あまり欲しくない」「絶対に欲しくない」という質問項目がある。この項目の回答は実は同じ人でも変化する。女性についてみれば、子どもを持たない女性の「絶対に子どもが欲しい」という回答は20代前半では低い。しかし29…
残り1056文字(全文2556文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める