労働現場で高まる外国人依存度 “争奪戦”で韓国や台湾に負ける日本 加藤真
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労働力不足により外国人の低・中熟練労働者の需要が高まっているが、韓国や台湾との獲得競争が激化している。
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人口減少社会で労働力不足が懸念される中、全労働者に占める外国人労働者の割合は年々増加傾向にある。2013年は労働者の88人に1人が外国人労働者だったが、23年は労働者の33人に1人が外国人労働者となっており、10年間で約3倍に増加した。産業別で見ると、宿泊業・飲食サービス業の17人に1人が最も高く、次いで製造業が19人に1人となっている。それだけ労働の現場では外国人への依存が高まっており、外国人労働者なしでは成り立たない産業が生じている。
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コロナ禍による景気後退に伴い、外国人労働者への依存度の伸びは鈍化がみられたが、外国人労働者数は増加が続いており、23年は過去最高の205万人となった。こうした事態は、一時的な景気変動があっても人口減少・労働力不足の構造は変化が生じにくく、海外からの労働力の受け入れ、定着は重要な政策課題であることが示されたといえる。
こうした中、政府は外国人労働者として、高度人材だけでなく、低熟練労働者、中熟練労働者についても、適正な形で積極的な受け入れを進める方向にある。
具体的には、低熟練労働者については、技能実習制度を見直し、育成就労制度の創設に向けた法案審議が開始された。また、中熟練労働者については、技能実習(育成就労)を修了したレベルの人材を対象とする特定技能の対象分野の拡大も進めている。特定技能には在留期間が通算5年上限の「特定技能1号」と、家族帯同が認められ、在留期間に上限がない「特定技能2号」がある。特定技能1号は現在、外食業、建設業など12分野が対象だが、3月29日の閣議決定で、新たに自動車運送業、鉄道など4分野が追加された。特定技能2号も、従来2分野のみだったが、昨年11分野に拡大された。
韓国に劣る賃金
ただし、低・中熟練労働者について、隣国の韓国や台湾でも受け入れの拡大施策を進めており、獲得競争が激しくなっている。
韓国や台湾など諸外国に比べて、日本は外国人労働者にとってどれほど魅力的な国なのか。外国人労働者が働く国を選ぶ際には、いかに「早く・安く・安全に」移動ができ、就労できるかがポイントと指摘されている。
「早く」は、手続きなど必要な準備が簡易であること。特に早いのは中東で、例えばサウジアラビアで就労を希望した場合、1カ月足らずで就労開始に至るという。台湾も3カ月程度とされる。一方、日本は最低限の日本語習得が求められるとともに、手続きに必要な書類が他国に比べて多く、おおむね半年から1年弱の期間を要し、相対的に手間ひまがかかることが送り出し国現地からは挙げられている。
「安く」は、移住にかかる費用が安いこと。22年の出入国在留管理庁の調査によれば、技能実習生が支払った移住費用総額の平均は54.2万円で、技能実習生の54.7%が借金をしてその費用を工面している。この点について、韓国は労働者の送り出し・受け入れを国が管理する雇用許可制を運用しており、各種調査をみる…
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週刊エコノミスト
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