「世界の頭脳」を求める日本の大学 マレーシア分校の開設やイスラエルの大学との連携 荒木涼子
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少子化で国内の18歳人口の減少する中、日本の大学は、優秀な学生を海外に求め始めた。
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18歳人口の減少で大学が今、学力、研究力ともに岐路に立たされている。そんな中、国内外を問わず優秀な中高生や学生に学問・研究の場として選んでもらおうと、新たな教育システムや研究環境作りの模索が始まった。
「学生が減っていく中、人材交流は欠かせないが、海外から来てくれる人を待つだけではだめだ。拠点を作り、人材を循環させる」。筑波大学は今年9月、分校をマレーシアに開設する。学位を授与する学部として「学際サイエンス・デザイン専門学群」を設置し、現地の高校生からの入学を予定する。同学群準備委員会委員長の辻村真貴・同大生命環境系教授は「徹底したPBL(課題解決型学修)で日本の高等教育を進化させていきたい」と話す。
ピークから半減以下に
日本の18歳人口は1992年の205万人をピークに減少し続けている。35年に初めて100万人を割り、40年には82万人に減るとの推計もある。研究力については、論文数の減少が叫ばれて久しい。文部科学省の研究所による22年の調査によれば、「注目度が高い論文数」として各分野の上位10%に入る論文数(18~20年平均)は、日本は過去最低の12位だった(図)。
そこで筑波大学が挑戦の場として選んだのが、首都クアラルンプールでの新しい教育システムを提供する分校開設だ。定員数は1学年40人で、4学年計160人。1学年につき数人は、日本人も含めた留学生も受け入れる予定だ。
なぜ海外なのか。辻村教授は「入学から卒業までフルに現地で日本型教育を提供することで、現地に根ざしつつ、本校とのコネクションを活用できる」と説明する。大学としての拠点を置くことで人材交流の質と量を高め、本校や、さらには国内の他の大学院などへの循環も狙う。
教育機関の「海外輸出」
特徴的なのが教育システムだ。マレーシア校では、地球規模の課題に対し、科学的証拠に基づくデータサイエンスで解決策を導くPBLの教育に重点を置く。学生の目的や問題意識から学ぶ分野を選択できるよう、従来の学部領域にはこだわらない教育を提供する。「現場での対応力や自ら問題を設定できる力を身に付けさせ、企業にも、大学院や研究機関にも真に必要とされる人材を育成する」。マレーシアにはすでに英国や豪州、中国など9大学の分…
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週刊エコノミスト
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