地方消失の真因は若い女性の流出 若者雇用創出が最善の人口対策 天野馨南子
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人口減少が加速する地域は、若い女性の定着に弱い。特に未婚女性に魅力的な職場の提供なくして、復活はありえない。
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日本の人口減少の議論は、残念ながらエビデンス(証拠)に基づいている議論とは言い難い非科学的なものが目立っている。データを用いて解説しているように見えて、実は何も言えていない、課題がつまびらかになっていない、という状態である。
例えば誰でも耳にしたことがある「東京一極集中」について、その本質をどれくらいの人々が正確にとらえてきただろうか。
東京一極集中は、その反対側の現象として、転入者より転出者が多い地方の「社会減(転出超過)」を生み出していることは誰しもわかるだろう。2014年に成立した「地方創生関連2法」は、国と自治体が5カ年計画で「総合戦略」の策定を求めるなど、地方の社会減に対する、国を挙げての取り組みへの本気度を示すものだった。
しかしその後に次々と地方自治体で取り組まれた地方創生政策が、「根拠に基づく政策決定(EBPM、エビデンス・ベースド・ポリシーメーキング)」に基づくものだったとはとても言い難い。
いまだに筆者の元には、地方のマスメディアから「人口が××人を割ることになった! どう思いますか?」という人口総数だけに注目した問い合わせばかりが届く。地方の都市から、誰が、どのタイミングで出ていくことによって社会減が止まらないか、ということが市民に示されていない。この社会減の本質を、自治体や地元メディアさえもわかっていないまま、「なら増やすためにこんなことをしたらいいかも」と地域おこしに励んでいるのが現状だ。
では一体、地方の社会減の真の姿はどのようなものなのか。データを基にそのメカニズムをしっかり知る必要がある。
女性を引き寄せる東京
23年に全国47都道府県間の人口移動(日本人のみ)を見ると、人口綱引き(転入─転出)で勝利(転入超過)した社会増エリアはわずか6都府県にすぎない(表1)。
これらの人口の社会増エリアには共通の特徴がある。「男性よりも女性を多く集めている」点だ。日本人だけでなく、外国人も含めた移動者でも同じ傾向で、コロナ禍前は女性が男性の1.3倍、コロナ禍による移動制限中は1.4倍と、とにかく「女性定着に強い」ことが社会増エリアの特徴である。
東京都は09年以降、移動者総数で常に男性より女性を多く集め続けており、コロナ禍の移動制限中は男性の2.2倍もの女性が定着した。「感染症ごときでは、就職のために地元を出ていく私の意思は揺るがない」といった移動は、実は女性に顕著であった。
対照的に社会減エリアはとにかく女性定着に弱い(表2、拡大はこちら)。23年に日本人人口で社会減となったエリアは41道府県に上るが、そのうち35道県が男性よりも女性が減少している。この結果から、地方創生・地域おこしというならば、大半のエリアが男性よりも女性の誘致や取り戻しに重みを置いた政策や対策を打ち出してこなければならなかったことがわかる。
ここで国や地方の政策関係者が口にする「あえて女性を避けた政策は出していません」という言葉は典型的な言い訳にすぎない。政策の中身を見ると、男性以上に女性誘致に力を入れているような政策は皆無に等しい。地方における都市計画は、その策定を担う委員が「男性ばかり」というケースも少なくない。人口の半分が女性であるにもかかわらず、女性の意見を地域計画の意思決定に取り入れずに、「地域の行く末は大丈夫」とのんびりと構えている。それが日本の都市計画の「あるある」なのである。
中核都市の人口ダム崩壊
もう一つ、地方創生がうまくいかない、決定的な誤解がある。
筆者はこれまで、複数の県の人口減少に関するアドバイザーを務めてきたが、西日本でよく耳にするのが「福岡がうらやましい」「大阪に行ってしまう」である。では本当に、この日本三大都市圏の一つとされる大阪府や、九州中の女性を集める福岡県をうらやましがっていていいのだろうか。
人口動態を詳しく分析している筆者から見れば、これらの「うらやましい」とされるエリアの人口ダム機能の崩壊こそが、日本の地方「非」創生の主因と考えている。
地方中核都市はその周辺エリアの人口ダム機能が備わっていてこそ、中核都市の意味があり、周辺エリアの人口が維持される。例えば東京都は大量の移住者を受け入れることで、過密化し、もろもろの価格が高騰し、それを避けた「にじみ出し人口」が、周辺の埼玉・神奈川・千葉にもたらされており、広域での社会増の主役となっている。
しかし、大阪府や福岡県は周辺エリアの人口を受け入れて社会増となりつつも、実は、多くの人口を首都圏に送り出してしまっている。
首都圏以外で最大の社会増エリアとなっている大阪府は23年、1000人以上の流入のある6…
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週刊エコノミスト
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