インタビュー「人口減少を自分事として危機感共有を」三村明夫・人口戦略会議議長
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「2100年に日本の人口を8000万人で安定させる」という提言をした「人口戦略会議」で議長を務める三村明夫・日本製鉄名誉会長に、同会議の狙いを聞いた。(聞き手=荒木涼子/稲留正英・編集部)
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── 人口減少社会に向かう日本の現状をどう捉えているか。
■人手不足や、地方都市のシャッター通りなど、いろいろなことで人口減少のマイナス面を実感できるようになっているが、国民全体の危機感は高まっていないと思う。
国立社会保障・人口問題研究所は昨年4月に2100年に人口が6300万人、高齢化率40%という予測を立てた。しかも人口減少が6300万人で止まるのではなく、さらに進むと見ている。しかし、この予測の公表で国民に特に危機感が生まれているわけではない。
── 危機感を高めるには。
■今のまま人口減少が進むと、日本はどういう社会になるのか、その日本がどれだけ悲劇的なのかという共通認識を持たない限り、危機感は生じない。
本来は政府が単に5年ごとの将来予測を発表するだけでなく、「不都合な真実」を具体的に描いて、それを国民にアピールすることが必要だ。これから人口減少対策を行うにしても、40年以上の長い時間を要する。しかも今はコストと努力を投入するだけで、効果が表れるのは将来だ。それでも将来に希望を持ちながら、途中で政権が代わっても一貫した思想で進め続けることが必要な案件だ。だからこそ、国民全員が共通の認識を持って、自分事として人口減少問題を捉えることができないと、なかなか人口減少対策は進まず、掛け声だけで終わってしまう。
現役世代の責任
── このまま行くと将来の日本はどうなるか。
■人口はGDP(国内総生産)を支える生産の担い手であると同時に、個人消費の担い手でもある。人口が減少する国は、経済規模が縮小する。2100年に人口が6300万人に半減した日本は、経済規模が半減する可能性もある。日本は今、世界4位の経済大国だが、存在感のない小国に落ちてしまうかもしれない。
また、現在の社会保障制度は、将来に安心をもたらす優れた制度だと思うが、2100年に高齢化率が40%ということは、1人の労働者が1人の高齢者を支える「肩車社会」になる。計算上はそうなるが、そんなことはできるわけがない。社会保障制度自体が潰れてしまう。
さらに深刻なのは地方の消滅だ。国立社会保障・人口問題研究所の2050年の都道府県別人口見通しでは、これから全国平均で17%人口が減るが、30%以上人口が減る県が11県ある。市町村レベルでは60%以上減少する自治体も出てくる。
── 人口減少を自分事として捉えるにはどうしたらよいか。
■想定される2100年は75年後だが、全く遠い離れた世界ではない。今生まれようとしている我々の子供世代、孫世代が高齢者となり、誰かに養ってもらわないといけない。しかし、その頃の日本は高齢者を誰も養ってくれない社会になる可能性がある。我々の子供や孫にそんな社会を残してよいのか。子供世代や孫世代の問題は、我々と非常につながりのある将来世代の問題という意味で、我々自身の問題で…
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週刊エコノミスト
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