一気に市場拡大した「がん免疫療法」 mRNA技術も使い種々の創薬進む 前田雄樹
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「免疫チェックポイント阻害薬」だけでなく、「T細胞エンゲージャー」や「がんワクチン」などさまざまな免疫療法の開発が急ピッチに進む。
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小野薬品工業と米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した「オプジーボ」の登場以降、急速に市場を拡大してきた「がん免疫療法」。中でも、同薬をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、その作用の仕組みからさまざまな種類のがんに治療対象を広げ、今やがん治療に欠かせない存在だ。
主な免疫療法は、がん細胞が免疫にかけているブレーキを解除する「免疫チェックポイント阻害薬」▽二つの異なる標的たんぱく質に結合する二重特異性抗体を使って、がん細胞にT細胞(免疫細胞の一種)を引き寄せる「T細胞エンゲージャー」▽がん細胞表面の目印(抗原)を認識するアンテナを人工的に取り付けた免疫細胞を投与する「CAR(キメラ抗原受容体)─T細胞療法」▽ウイルスでがん細胞を破壊する「腫瘍溶解性ウイルス」▽がん抗原を投与することで免疫を活性化させる「がんワクチン」──などがある。
現在、がん免疫療法の中心となるのは免疫チェックポイント阻害薬だ。国内では、2014年発売のオプジーボを先頭に、八つの薬剤が相次いで市場に登場した。世界で最も売れているのは米メルクの「キイトルーダ」で、23年の売上高は250億ドル(約3.8兆円)を記録。オプジーボも100億ドル(約1.5兆円)を超え、英アストラゼネカの「イミフィンジ」やスイス・ロシュの「テセントリク」なども数十億ドルを売り上げる。
今ある免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞に発現する「PD-1」やがん細胞に発現する「PD-L1」をターゲットとするものが主流だが、ほかにも免疫チェックポイントに関わる分子は存在する。「TIGIT」「LAG-3」「TIM-3」などがあり、複数の大手企業が開発を進めている。BMSは22年、オプジーボにLAG-3を標的とする抗体医薬を組み合わせた「オプデュアラグ」の承認を欧米で取得。日本では、同社と小野薬品が共同で第2段階の臨床試験を行っている。
腫瘍溶解性ウイルスも
がん免疫療法の幅は広く、免疫チェックポイント阻害薬以外の治療法の開発も盛んだ。
アステラス製薬はがん免疫療法を重点研究開発領域の一つに据え、T細胞エンゲージャーや腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞…
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週刊エコノミスト
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