血液がんに有功な「CAR-T細胞療法」固形がんへの応用に期待 前田雄樹
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患者の免疫細胞を強化する「CAR-T細胞療法」。血液がんへの効果が高く、さらなる応用が期待される。
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CAR-T細胞療法は、患者の血液から取り出したT細胞に人工的に遺伝子を導入し、「CAR」(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なたんぱく質を発現させ、患者の体に戻す治療法で、がん免疫療法の一種に位置づけられる。2017年にスイス・ノバルティスの「キムリア」が登場して以降、欧米では六つのCAR-T細胞療法が承認されており、日本ではこのうち五つが販売されている。
市場をリードするのは、米ギリアド・サイエンシズだ。同社は17年に米カイトファーマを買収してCAR-T細胞療法に参入。23年の売上高は計18億6900万ドル(約2900億円)に達した。米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)も、同年の売上高は8億ドル(約1200億円)を超えた。
大塚、アステラスなども
CAR-T細胞療法の開発は、白血病やリンパ腫で高頻度に見られる「CD19」というたんぱく質を標的としたものが先行していたが、21年以降、「BCMA」と呼ばれる別のたんぱく質を標的とした「アベクマ」(BMS)と、「カービクティ」(米ジョンソン・エンド・ジョンソン)が実用化され、多発性骨髄腫にも治療対象が広がった。
日本企業でも取り組みが進む。大塚ホールディングス(HD)傘下の大塚製薬は、大阪大学から「活性型インテグリンβ(ベータ)7」という分子を標的としたCAR-T細胞療法の権利を取得し、国内で初期の治験を実施中。アステラス製薬といった大手のほか、ベンチャーのノイルイミューン・バイオテックやブライトパス・バイオ、信州大や三重大、国立がん研究センターといった研究機関でも開発が行われている。
血液がんに高い効果を示すが、課題も多い。患者自身の細胞を加工するオーダーメード型のため、コストが高く、製…
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週刊エコノミスト
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