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週刊エコノミスト Online 歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話

❹虫歯が減っては困る歯科医 林裕之

 虫歯をなくすことに主眼を置き歯科医を増やした日本と、予防を重視したスウェーデン。国家戦略の違いが残存歯数の違いとなって現れている。

>>連載〈歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話〉はこちら

 前号で、永久歯の虫歯は子供では減っているが、成人以降は90%以上の人に1本以上の虫歯があり、1993年とほぼ変化がないことを報告しました。なぜ、大人の虫歯は減らないのでしょう?

 私が子供の頃(1950年代)、日本は虫歯大国で60年ごろには社会問題となりました。歯科医も少なく、歯科医院の前は朝から順番待ちの行列ができていたのを覚えています。そこで講じられた国家戦略は歯学部を増設し、歯科医師を増やす策でした。治療できる人を増す戦略です。

 同じ頃のスウェーデンも虫歯と歯周病の多さが社会問題となっていました。スウェーデンは治療だけではなく、予防のための歯科医療改革を国家戦略としました。その一環として再び人を使って予防法の実証実験も行っています。555人の被検者をAとBの2グループに分け、Aグループにはホームケアのやり方を教えるとともに、2~3カ月に1度予防措置を施す。Bグループは年に1度の歯科治療のみ。

 その結果Aグループは虫歯も歯周病も発生はわずかで、予防効果が顕著に出ました。一方Bグループには予防効果は認められなかったそうです(Bグループのモニタリングは6年間で中止、参考サイト:予防大国/歯科先進国スウェーデン、https://swedentis.com/search/jsda/)。

 こうした研究からスウェーデンの歯科医療改革は「ホームケア」と「予防措置」の二つを柱として推進されました。

 気になるのはAグループの「ホームケア」と「予防措置」とは何かです。論文を読んでみましたが、いま一つ具体的ではありませんでした。どうやら歯に付くバイオフィルム(細菌の集合体/プラーク)を徹底的に除去したようです(プラークコントロール)。

スウェーデン式歯磨き法

 ホームケアの具体的な方法は、2019年5月放送NHK『ためしてガッテン』でも紹介された「スウェーデン式歯磨き法」にヒントがありました(表、12歳以下は禁止)

①フッ素入り歯磨き粉をたっぷり使う(2センチほど)、②そのまま2分ほど磨く、③泡だけ吐き出し水で口をすすがない、④この後2時間は飲食をしない。

 水ですすがずに歯磨き粉を口にとどめることで、フッ素のもつ歯の再石灰化作用を最大限得ようとするものです。ただし、この歯磨き法は12歳以下の子供は禁止としています。フッ素には一度に過剰に摂取したり、長期間にわたって大量に摂取すると、歯や骨に異常が出るなどの症状が起こることが報告されていることが考慮されたようです。

 次に「予防措置」。これは定期的に歯科医や歯科衛生士などプロフェッショナルによる口腔ケア(プロケア)を受けることです。素人ではできないことをプロの技術と専用の器具や機器で、きれいにしてもらうのです。同じ時期に虫歯大国だった日本とスウェーデンですが、現在の両国民の残存歯数に差が生じています。

 70歳の残存歯数の違い(28本中)につい…

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