投資・運用 物価・金利・円安

インタビュー「世界的にインフレは落ち着き、景気は年後半から減速」新原謙介ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ日本法人代表取締役兼CIO

 昨年末の見通しに比べてグローバルに景気の底堅さはあるものの、インフレ(物価上昇)の低下傾向と景気減速が今年後半から来年にかけて進むとみている。インフレの落ち着きを確認しながら、各国・地域の中央銀行の利下げが始まるだろう。年後半に向けて、景気の緩やかな減速と市場に織り込まれていない地政学的なリスクは高まる可能性があり、ボラティリティーは高まりやすい環境にある。11月の米国大統領選や中東情勢は注意深く見ている。

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 金融政策に関しては、カナダ銀行(中央銀行)や欧州中央銀行(ECB)が先行する格好で始まった利下げが今後、他の国・地域にも広がるだろう。米国の利下げは昨年末の見通しより時期が後ズレしている。当社は年内に合計2回の利下げを見込む。

 今後の投資テーマは、相対的に債券が株式に対して優位になるだろう。株式市場の需給は悪くなく米国では金利高と株高が共存する状況が続いたが、緩やかな景気減速を想定すると、ここから企業収益が大きく拡大したり評価が引き上がる余地は少ない。金利上昇と株式バリュエーションの引き上げにより、足元ではS&P500の株式益回りよりも米国債券利回りが上回っている。長期的観点で、債券投資の相対的な魅力は高いと考えている。

 世界的な利下げサイクルに入る中で、日本だけは違う動きになる。日銀は7月にも0.25%への利上げを予想する。26年3月までにさらに2~3回の利上げを実施して、ターミナルレート(政策金利の到達点)は1.00%程度と予想する。

1ドル=140~150円

 ドル・円レートは、2025年までの見通しとして1ドル=140~150円を提示する。そもそもの円の安さに加えて米国が今後利下げをする一方で、日本は利上げを実施して日米の金利差が縮小するからだ。ただし11月の大統領選でトランプ前大統領が勝つと、追加関税や減税などインフレ的な政策が予想される。その場合、米国の利下げ余地が狭まりドル安が限定される可能性もある。

 足元1%前後の日本の長期金利は24年末に1.25%まで上昇し、25年末には1.50%を予想する。長く低い物価水…

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週刊エコノミスト

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