国際・政治 欧州議会選挙
仏総選挙は反極右の“危機ばね”につながるか、“大統領の火遊び”か 渡邊啓貴
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欧州議会における極右勢力の躍進は、仏解散総選挙という玉突き現象を引き起こした。
欧州を“極右の暗雲”が覆う
6月初旬に行われた欧州議会選挙では、欧州統合推進派が多数派を制した。しかし芝居はここで終わらず、第2幕が待っていた。欧州最大勢力を誇る極右マリーヌ・ルペン氏率いる「国民連合(RN)」が第1党となったフランスで、下院・国民議会の解散総選挙が行われることになったからだ。ひとまずは、欧州議会選挙で極右勢の伸張が抑えられたものの、「極右の暗雲」が欧州を覆っている。
欧州連合(EU)全体では欧州統合推進派の2大政党(中道右派「欧州人民党(EPP)」・中道左派「社会・民主主義進歩連盟(S&D)」)と中道リベラル派「欧州刷新(RE)」が720議席中、406議席を獲得し、過半数を制した(6月18日時点の暫定結果)。EPPは2014年以来、2回続けて後退していたが、今回は14議席増の190議席を獲得、回復の兆しを見せた。ただ、S&Dは3議席減の136議席、 REは22議席減の80議席だった。
極右、健在ぶりを誇示
一方、欧州統合反対派を含む右翼ポピュリスト「アイデンティティーと民主主義(ID)」と「欧州保守改革(ECR)」の両会派も58議席と76議席で、それぞれ9議席、7議席増やした。
前々回の14年の選挙ではIDとECRが135議席を獲得して大躍進し、世界に驚きを与えたが、今回の選挙結果は改めて欧州統合反対派の健在ぶりを内外に誇示することになった。
とりわけ、ルペン氏が率いるフランスの極右RNは意気軒高だ。党首バルデラ氏を筆頭リストとするRNがこれまでで最高の31・5%を獲得して大勝、野党第1党の健在ぶりを見せつけた。それに対し、マクロン大統領が率いる与党中道の「ルネサンス(欧州議会のREの主力)」の得票率は15・2%でRNに大きく水をあけられる形となった。22年の仏大統領選挙とその直後の国民議会選挙における極右善戦の流れは続いている。
欧州議会で最大の96議席を割り当てられているドイツではショルツ首相の政権与党社会民主党(SPD)が敗退、13・9%の支持率で14議席(2議席減)で第3党に転落した。極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率を16%伸ばし、15議席(4議席増)を獲得、一躍第2党に躍り出た。AfDはナチス時代もどきの暴力事件を起こすほど過激化している。
スペインでもペドロ・サンチェス首相率いる社会労働党(PSOE)は、20議席へ後退、第2党に転落した。その一方で、極右ポピュリスト「VOX」は 19年の約2倍の10・4%の得票率を得た。VOXは19年4月総選挙で初めて議席を獲得したが(24議席)、23年7月同国総選挙では国民党ともども後退していたので、息を吹き返した格好だ。
イタリアではジョルジャ・メローニ首相率いる右派政党「イタリアの同胞」が勝利した。28・8%の支持率、 14議席増の24議席を得て、第1党となった。メローニ氏は元々、ファシスト政党「イタリア社会運動」の出身者。その主張には移民排斥など極右的な性格が強かったが、極端な排外主義を標(ひ…
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週刊エコノミスト
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