フィリピン経済を支える在外国民の仕送り 海外直接投資を阻む高い電気代 堀江正人
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15年間でフィリピンの輸出額はわずか3割増。7.6倍のベトナムとなぜ明暗が分かれたのか。
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フィリピンは新型コロナウイルス感染症が世界的に広まった2020年、大幅な景気後退に見舞われた。同年4~6月期の経済成長率は前年同期比16.9%減と著しく落ち込んだ。
しかし、政府が外出・移動制限を緩和した21年9月以降、娯楽や飲食などの個人消費が拡大し、景気は急回復した。個人消費の堅調さを背景に、23年の実質経済成長率は5.6%と力強く、インドネシア(5.1%)、ベトナム(同)、マレーシア(3.7%)、タイ(1.9%)を上回り、東南アジア主要国で首位だった。
フィリピンの中長期的な経済成長メカニズムはタイやベトナムとは異なる。両国は輸出産業を拡大することで雇用、所得、輸出を増やし、経済成長を遂げる輸出主導型だ。一方、フィリピンは主に海外で働く在外国民の送金が支える個人消費が中心の内需主導型といえる。世界銀行のデータによれば、22年の国内総生産(GDP)に占める輸出額の比率は28%だった。インドネシア(24%)より高いが、ベトナム(94%)、マレーシア(77%)、タイ(66%)を大きく下回る。
ここでは人口やGDPの規模が近いベトナムとの比較で論じよう。フィリピンの人口は約1.1億人、GDPは435億ドル(約6.8兆円)。ベトナムは約1億人、438億ドルだ(いずれも23年推計)。
半導体が主力品目
フィリピンの輸出額は07年までベトナムより多かった。しかし、22年輸出額の07年比はフィリピンの1.3倍に対し、ベトナムは7.6倍とはるかに高かった。ベトナムの22年輸出額はフィリピンの4.7倍に上っている。ベトナムが輸出で稼ぐ国になった一方、フィリピンは大きく後れを取った。
フィリピンの輸出品は1970年代までココナツや砂糖などの農産物が金額ベースで半分程度を占めていたが、90年代になると外資系半導体メーカーの進出によって半導体が主力品目となった。しかし、外資系企業は00年代以降、大型投資をせず、半導体関連の輸出は伸び悩んだ。21年以降、世界的な半導体不足の影響で価格が高騰したことから、フィリピンの輸出額は増加したものの、00年代初頭の2倍程度にとどまっている。
一方、ベトナムの輸出品は、90~00年代は原油などの天然資源や繊維製品などの軽工業品が主力だった。09年になると、韓国のサムスン電子が北部バクニン省に携帯電話工場を稼働させ、増産を続けた。
近年では同社のスマートフォン生産台数に占めるベトナム工場の比率は50%に上るとされるほど多い。サムスン電子以外を含め、ベトナムの電話機輸出額は10年から22年にかけて40倍に増え、輸出額全体を押し上げた。10年代以降、外資系製造業による海外直接投資(FDI)が両国の明暗を分けたといえる。
近年、フィリピンのFDI受け入れ額は増えているが、ベトナムのような盛り上がりには欠け、水をあけられている。ベトナムは07年に世界貿易機関(WTO)に加盟したことでビジネス環境が好転すると見越した外資…
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週刊エコノミスト
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