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国際・政治 沸騰!インド・東南アジア

政情不安が続くタイ 日本企業の投資は停滞 中国EVメーカーは続々進出 助川成也

2023年3月のバンコク国際モーターショーで展示されたBYDのプラグインハイブリッド車 筆者撮影
2023年3月のバンコク国際モーターショーで展示されたBYDのプラグインハイブリッド車 筆者撮影

 政情不安や労働力人口減少で投資先としての魅力が低下。日本車は中国製EVの攻勢にさらされている。

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 タイ政府は投資優遇策を設けて外資系企業を数多く誘致し、2000年代初めまでに工業化と経済の高成長を実現した。16年に死去した国王のラマ9世は国民から敬愛を集め、治世下の社会・政治体制は安定し、「東南アジアの優等生」と呼ばれてきた。日本企業はタイを有望投資国と高く評価し、長年にわたり資本を投下したことで、タイは日本企業にとって中国に次ぐ一大産業集積地と化した。

 しかしタイは今、有望投資国からの陥落の危機にある。国際協力銀行が毎年発表する「中期的有望事業展開国・地域」の23年度版で、タイはベトナム(2位)やインドネシア(5位)より下の6位になった。1992年以降、タイがトップ5から陥落したのは初めてだ。

 投資先として魅力が低下した背景の一つは、タイの民主主義が後退していることが挙げられる。タイ国軍は06年にクーデターを起こし、圧倒的な指導力を誇り、国民の強い支持を受けていたタクシン政権を倒した。14年にも後継政権を放逐している。23年5月の総選挙では、タクシン派の後継政党に当たるタイ貢献党が「軍政の流れをくむ政権の終焉(しゅうえん)」を掲げて戦った。しかしふたを開ければ、仇敵(きゅうてき)の旧軍政側と連立政権を樹立、15年にわたり海外逃亡を続けたタクシン元首相は帰国した。民主支持層の多くは「貢献党は民主化よりタクシン氏の帰国を優先した」と見て幻滅し、強く反発した。現在も政情不安の火種はくすぶり続けている。

 タイの魅力が低下した背景の二つ目は、社会構造の変化だ。生産を支える労働力人口は18年に減少に転じ、総人口も30年以降、減る見込みだ。人口動態の変化は経済成長の足かせになり、日本企業は戦略的投資をちゅうちょするようになった。外資系企業による投資の停滞はタイの輸出に影響する。タイ商務省によれば、23年の総輸出額のうち、75.4%が外資系企業による。

日本車シェア8割弱に

“地殻変動”の兆しがあるのは自動車産業だ。

 国際自動車工業連合会(OICA)が集約した23年の国別自動車生産台数によれば、タイは184万台で10位。東南アジア諸国では首位だ。タイでは27社がトラックを含め自動車を組み立て、1次サプライヤー525社、2次以降の1760社がそれを支え(22年現在)、「アジアのデトロイト」の異名で知られる。

 タイの自動車市場は00年代、日本ブランドのシェアが常に90%を上回る「日本車の牙城」だった。しかし、23年の同市場は厳しい環境に陥った。干ばつ被害を受けて地方部の農業所得が減り、家計の債務比率が上昇して金融機関がローン審査を厳格化した。その状況で中国自動車大手の比亜迪(BYD)を中心とする中国製の電気自動車(バッテリー式、BEV)が急速に販売台数を増やした。23年の日本車シェアは77.8%に減少し、初めて8割を割り込んだ。

 タイに初めて進出した中国車は14年の上海汽車だ。タイ大手財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループと合弁企…

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