大統領選後にらみバイデン政権が重要規則を“駆け込み”提出 谷川喜祥
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恐らく今年4月は、ワシントンDCで政策を仕事とする人たちにとって極めて多忙な月だったことだろう。バイデン政権は同月、大統領令の定義に基づく66もの重要規則を公表、うち34は年間2億ドル(約320億円)以上の経済的な影響を与えるものとされる。同政権で公表された重要規則が月20件を超えることはまれで、これは突出した数字といえる。なぜそれほどの数の規則がこの時期に公表されたのか。
来る大統領選に向けた有権者へのアピールという側面もあろうが、行政運営の視点から考えると分かりやすい。米国では1996年に行政監視を目的とした議会審査法が制定された。これにより、連邦議会には政府が制定した規則を過半数による決議で失効させる権限が与えられた。されど、決議は大統領が署名しなければ効力を発揮しないのは、三権の相互牽制(けんせい)が徹底されている米国ならではだ。
そして、審査のために連邦議会に与えられた期間が60会議日というのが今回のポイントとなる。規則が議会に提出され、60会議日を待たずに会期が終了した場合、その規則は次期会期に提出されたものとして取り扱われる。これはルックバック規定と呼ばれる。
今秋には大統領選・議会選挙があり、選挙後の議会は来年1月に開かれる。仮に大統領選の結果、トランプ政権誕生となれば、ルックバック規定により、来年に先送りされた今年提案の規則は失効へと追い込まれるリスクがある。そのため、現バイデン政権としては万が一の事態を回避すべく、ルックバック規定の対象外と見込まれる4月中に、重要な規則を“駆け込み”で提出したというわけだ。
16件覆ったトランプ政権
同法の制定後、規則を承認…
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週刊エコノミスト
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