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中国など「外資に米国の土地与えぬ」法が2023年に15州で施行 西田進一郎

中国など外国資本による農地取得が問題化している(米アイオワ州の農地、 ZUMA Press/共同)
中国など外国資本による農地取得が問題化している(米アイオワ州の農地、 ZUMA Press/共同)

 米連邦議会で中国に対する強硬路線を引っ張っているのが、下院の「米国と中国共産党との戦略的競争に関する特別委員会」だ。その委員長を務めるジョン・ムーレナー議員(共和党)らが、6月中旬にある法案を提出した。

 略称は「共産主義の中国に米国の土地を与えない法」案。中国が米国内の連邦政府所有地に隣接する不動産を購入できないように、米大統領は必要な措置をとるというものだ。対象になるのは、①中国政府の代理人、②中国政府が契約やその関係などを通じてその事業の持ち分の25%以上を所有している企業──で、米国内の内務、国防、農務の各長官の管理下にある連邦政府の所有地などに隣接する土地だ。

 共同提案者に30人以上が名前を連ねており、関心の高さを感じさせる。ムーレナー氏は声明で「我々は農地を保護し、最大の敵対国が機密性の高い米軍基地の近くの土地を所有できないようにする必要がある」と表明した。

 米国内では、中国による土地の取得が数年前から問題化している。農務省によると、中国の個人・団体、中国が資本参加する米企業が米国内で保有する農地は、2010年の約1万3700エーカー(約55平方キロ)から、21年は約38万3900エーカーへと急増した。

基地近くの農地で注目

 注目を集めるようになったきっかけは、中西部ノースダコタ州で米空軍基地近くの広大な農地を中国のバイオ企業が買収したことだ。トウモロコシの加工工場を作る計画とされていた。

 当初は地元の自治体や議会も歓迎ムードだったが、約20キロ西側に空軍基地があることから、安全保障問題への懸念が浮上した。空軍は重大な懸念を表明し、中国の偵察気球が23年1月末から2月…

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