米エネ政策ではトランプ陣営の「エネルギードミナンス」が優勢 多田博子
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かつて湿地であったワシントンDCの夏は蒸し暑い。5月末の戦没将兵記念日(メモリアルデー)を境に気温は上がり、人々は至るところで冷房をキンキンにかける。電気料金は米国民の一大関心事だ。
こうした中、民主党の23人の議員が司法省に書簡を送り、米国の石油生産者が石油輸出国機構(OPEC)と結託して生産を抑制し、価格を高く維持して利益を膨らませている可能性があると非難した。その主張は、バイデン大統領が予算教書で指摘した「大企業の強欲こそがしつこいインフレの原因である」と同じロジックであり、私腹を肥やす企業や経営者を懲らしめるとの国民向けのパフォーマンスでもある。バイデン政権は、左派支持層への配慮から、自由貿易協定(FTA)非締結国向け米国産天然ガスの新規輸出許可審査の一時停止に加え、野生動物保護の観点からアラスカ州国家石油保留地の4割で石油・ガス開発を禁止する規制も導入した。
一方トランプ氏は、持論の「エネルギードミナンス(優勢)」を声高に主張している。「ドリル・ベイビー・ドリル(化石燃料を掘りまくれ)」は「ストップ・インベージョン(移民を止めろ)」と並ぶ遊説の頻出ワードである。
最近トランプ氏側近による「もし石油が1バレル=50ドル以下であったら、ロシアはウクライナ戦争を仕掛けず、イランもハマスやヒズボラに資金提供できる余裕はなかった。トランプ氏が再選されれば、米国内のエネルギー生産に関する制約を撤廃、大増産で雇用を増やし、エネルギー価格を下げ、米国の友好国にエネルギーを長期安定供給する」との発言を耳にした。米国が民主主義陣営の一大エネルギー供給国としてロシアなどと対峙(たいじ)し…
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週刊エコノミスト
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