消費の先導でお金が回る米国社会 物価上昇さえ次の消費の誘因に 嶋田恵一
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家の郵便受けをのぞくと、今日もクレジットカードの加入を勧める郵便物が届いていた。昨年4月にワシントンDCに赴任して1年がたった今、毎日のようにこうした郵便物を受け取る。差出人は金融機関であったり、量販店であったりする。スマートフォンのアプリを開くと、ここでもクレジットカードの勧誘メッセージが出る。1年間の米国生活で信用情報機関に金融取引履歴が蓄積されて、個人のお金に関わる信用度を数値で表した「クレジットスコア」が改善したからだろう。
米国での日々の暮らしの中ではクレジットカードの利便性を感じることが多い。飲料の購入や、地下鉄カードへの10ドル程度のチャージなどの少額支払いも、端末にカードをタッチするだけである。現金に比べ、支払いを意識することがないので、抵抗感なくついつい細かい買い物をしてしまう。
また、米国に住んで実感するのは、少ない抵抗感でお金を使わせる仕掛けがいろいろな生活の場面に組み込まれていることである。日々の生活ではサブスクリプション(定額利用)サービスが挙げられる。生活用品や自宅のプリンターの紙、インクの定期配送など、近くに購入できる店がないこともあり、つい使ってしまう。
高い車の下取り価格
一方で、大きな買い物はというと、自動車を例に挙げれば、下取り・再販売価格(リセールバリュー)の高さが購買時の抵抗感の軽減に貢献していると思う。個人的な感覚だが、人気の車種では、5年ほど前のモデルで走行距離が5万キロ超の中古車でも、販売価格は新車価格の7~8割と感じる。
米調査会社によると、今年3月の平均新車販売価格は4・4万ドル(約680万円)、中古車販売価格は2・6万ドルで…
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週刊エコノミスト
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