治安悪化のDC 警察予算を減らした特別区議会議員のリコール請求も 清水梨江子
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11月の大統領選挙に向け、米国ではさまざまな世論調査が行われている。中でも、有権者が何を重視して投票するのかを把握するために注目される調査項目の一つが、米国が直面する最も重要な問題は何か、という質問である。米ギャラップ社による4月の世論調査では、この質問に対して「移民問題」と答えた人が回答者の28%と最も多く、次いで「政府の機能・指導力の欠如」が19%、「経済全般」が14%、「生活コストの高騰・インフレ」が11%と続く。そして、第7位には「犯罪・暴力行為」(3%)が挙がっている。
殺人事件は年35%増
ワシントンDCでも、残念なことに近年、治安悪化が問題となっている。ワシントン警察が今年1月1日に発表した犯罪統計によると、2022年と比較して23年のワシントン市内での殺人件数は35%増の274件であった。自動車盗難件数に至っては、22年から23年にかけて82%も増加している。
『ワシントンポスト』紙とジョージメイソン大学が共同で4月中旬に実施した世論調査によると、治安悪化が深刻化していると回答した住民の割合は、ワシントンでは65%。これは、ワシントンに通勤する住民が多く居住するメリーランド州郊外の28%、同じくバージニア州北部の15%と比較して、極めて大きな数字となっている。
20年5月に、ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイド氏が白人の警官に逮捕され、死亡した事案が発生したことで、全米各地に「ディファンド・ザ・ポリス(警察予算を打ち切れ)」運動が広がったことは記憶に新しい。この抗議運動は、伝統的に黒人をはじめとする有色人種を支持層に抱える民主党が巻き起こしたものといわれることが多…
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週刊エコノミスト
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