米中対立のはざまのティックトック 大統領選を巡る政争の具にも 平田智之
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中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」禁止法が4月24日、バイデン大統領の署名により成立した。外国の敵対者に支配されているアプリについて米国内での配信、更新などを禁止するものだ。ティックトックの親会社「バイトダンス」は、猶予期間内に株式を売却するか、米国での事業を停止するかを求められる。
ティックトックは以前から中毒性やメンタルヘルスへの影響が指摘されていたが、これは他のソーシャルメディアも同様のはず。情報・流行の発信源になることも多く、若年層を中心に米国民の半数を占める1億7000万人ものユーザーを抱えるティックトックを禁止にした理由は別にある。
まず、ティックトック利用者の大量データ保有を通じた中国政府による米市民へのスパイ行為の懸念だ。こうしたデータはAI(人工知能)のアルゴリズムにも活用されるため、その保有は米市民の生活に無関係とも言い切れない。
他方、最近では中国側のインフルエンサーとしての位置づけが強調されており、実際、同法案の審議が進む中、ティックトック画面上で関係する議員の連絡先に禁止反対を唱えるよう訴えるメッセージが出現していた。その他、ティックトックのデータを使った政府や企業へのスパイ行為やマルウエア(悪意のあるプログラム)攻撃の懸念もあり、米議会では安全保障上の懸念を前面に出している。
攻勢強めるトランプ氏
バイデン大統領としては、自身の再選に重要な若年層の動向が気が気ではないだろう。今年2月に再選キャンペーン用にティックトックアカウントを作っていたのは皮肉ともいえる。
一方、トランプ前大統領は、これを好機と見て、バイデン大統領の決定につい…
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週刊エコノミスト
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