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投資・運用 足りる?足りない?老後資金

金融庁がやり玉にあげた悪徳商品「ターゲット型の外貨建て一時払い保険」とは 川辺和将

 金融機関の間で悪徳商品の販売が横行している。老後資金を確保するため資金運用を検討する人は要注意だ。

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 金融庁が7月5日に公表したリポートで衝撃の事実が明るみに出た。題名は「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」。近年販売が増えている「外貨建て一時払い保険」、とりわけ「ターゲット型保険」と呼ばれる金融商品をやり玉に挙げた。

 同庁元幹部は「ターゲット型は金融庁がかねて悪徳金融商品の代表格とみなしてきた仕組み債の保険版ともいうべき商品」と指摘する。リポートは生命保険会社、銀行、証券会社の間で、顧客を食い物にする不適切営業が横行しているという不都合な真実を映し出している。

 用語を解説しておこう。一時払い保険とは、顧客が保険料を一度に全額払い込む商品をいう。メリットについて、例えば明治安田生命保険のウェブサイトは「ほかの払込方法と比べて、もっとも保険料が割安になることです。保険料を安く抑えたい人は一時払いを検討しましょう」と記す。保険会社が保険料を外貨に両替して外国債券などで運用すると、円建て保険より保険金が増えることがある。それを見込んで購入する人が増えている。リポートによれば、外貨建て一時払い保険の残高は2023年9月までの3年間、増加傾向にある(図)。

「ターゲット型保険」

 そのうち金融庁が特に問題視するターゲット型保険は、顧客があらかじめ「ターゲット(運用の目標値)」を設定し、保険会社による運用結果がターゲットに達した場合、外貨建ての運用が自動的に終了して円建ての保険に移行する商品を指す。リポートによれば、同庁が23年8月末時点で運用が終了したターゲット型を中心とした外貨建て一時払い保険について調べたところ、購入後4年間で6割が円建ての保険に自動移行していたという。

 商品を販売した金融機関の多くが円建て保険に移行したタイミングで「同一商品を同一顧客に販売する乗換販売」をしていたとリポートは記す。販売員が顧客に「せっかく外貨建て運用でもうかったのだから、円建てのままではもったいない。もう一度購入しないか」などと、ターゲット型を再び契約するよう勧誘する商慣習があることがうかがえる。顧客は「購入→円建て移行→解約→再購入」を繰り返し、購入時だけでなく解約時も手数料を負担することになる。リポートは「こうした乗換販売は、販売手数料等が二重に発生することを考慮すると、必ずしも顧客にとって経済合理性があるとは言えない」と問題視する。

 運用中に円の価値が外貨に対して急速に高まれば、投資元本を割り込むおそれがある。円安が続くと見通す人は、為替変動時も外貨建ての運用を続けられる金融商品を選んだほうが合理的だろう。

 ある生命保険会社員に聞くと、「保険商品には保険金を支払うという保障機能があるから、株式や債券とは単純比較できない」。しかし、顧客がターゲット型を解約するたびに肝心の保障が途切れることになり、場合によっては同じ条件で再加入できなくなる。

 このようにターゲット型は保険商品を名乗っているものの、金融庁が問題視する仕組み債に似た危険な金融商品といえる。

 仕組み債とは何か。日本証券業協会のウェブサイトに載る説明によれば、「文字通り、一般的な債券にはみられないような特別な『仕組み』をもつ債券」であり、「スワップ」や「オプション」などの金融派生商品(デリバティブ)を利用するものとしている。

 インターネットに載る仕組み債の広告を基に説明しよう。ある証券会社が22年に売り出した「EB債(他…

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