小林氏に総裁選出馬の待望論 情勢見極める首相の判断は? 仙石恭
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7月13日、東京都内のホテルの大広間。土曜にもかかわらず、朝から数十人が集まった。中央のテーブルでは、模擬の閣僚会議が開かれていた。
「今日の南シナ海は、明日の東シナ海だ。経済安全保障の観点から、経済的威圧に対して、しっかりと同志国と連携していく姿勢を示すことが、極めて重要だ」
緊迫した場面で、経済産業相役を務めた自民党の小林鷹之前経済安保担当相(49)は、熱のこもった口調で訴えた。
今年で4回目となった、シンクタンク「日本戦略研究フォーラム」主催の台湾有事を想定したシミュレーション。
自衛隊の元将官が中心に作成した実態に即したシナリオに沿って、小林氏ら自民の国会議員十数人や、省庁の元幹部らが、日本政府の方針を検討した。
首相役は小野寺五典元防衛相。山下貴司元法相(58)、鈴木馨祐元副外相(47)らホープと目される議員も出席したが、小林氏の動向に、目を向ける者が少なくなかった。9月の総裁選への出馬待望論が浮上しているためだ。
中堅・若手に擁立論
小林氏は衆院千葉2区選出で、当選4回。元財務官僚で、旧民主党政権時代、米国に赴任していた際、日米関係が悪化していくことに危機感を抱き、政治家への転身を決断したという。
解散を決めた二階派の所属で、もともと若手有望株という呼び声は高かった。2021年10月に発足した岸田文雄政権で、新設された経済安保担当相に抜てきされた。
小林氏は月刊誌『正論』のインタビューで、「内閣総理大臣を目指す。いずれはその役を担えるよう、精進していきたい」と答えている。実際に立候補するかは不明だ。
自民は派閥の裏金事件で、世論の厳しい批判にさらされている。4月の衆院3補選で全敗し、地方選でも相次ぎ敗北するなど党勢の低迷は著しい。
裏金が発覚した安倍派の衆院議員の一人は「地元では犯罪人のような扱いをされる。次の選挙は相当に厳しい」と漏らす。
岸田首相は、再選に向けて総裁選に出馬するか、態度を明らかにしていない。党内では、来年秋までに実施される衆院選について、「岸田総裁のままでは勝てない」という不安が高まる。
何とか「刷新感」を演出するため、中堅・若手を中心に、小林氏を総裁選に擁立しようとする思惑がある。
総裁選に出るには、推薦人20人が必要だ。
自民には、衆院議員253人、参院議員115人が所属する(衆参両院議長を除く)。衆院では、当選1~3回の議員が計約70人おり、全体の3割弱。当選4回は、この期だけで約70人いる。参院は、当選1回だけで3割弱を占める。
麻生派以外の派閥は、解散を決めており、これまでのような締め付けは弱まる。中堅・若手は、横のつながりを生かして、結集する場面がありそうだ。ある中堅は「若い誰かが出るというなら、絶対に20人は集まるよ」と強気だ。
仮に小林氏が出馬したとしても、当選4回の議員が、初挑戦で勝つのは容易ではない。小林氏に…
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週刊エコノミスト
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